范可(斎藤義龍)について(その4)

  もう一度おさらい。まずは史実かどうかは考察せずに純粋に『信長公記』は何と言っているのかを読み取る

   合戦に打ち勝ちて、頸実検の所へ、道三が頸持ち来たる。此の時、身より出だせる罪なりと、得道をこそしたりけり。是れより後、新九郎はんかと名乗る。古事(こじ)あり。昔、唐に、はんかと云ふ者、親の頸を切る。夫者(かのもの)、父の頸を切りて孝となるなり。今の新九郎義龍は、不孝、重罪恥辱となるなり。

信長公記』(新人物往来社)より

 

(1)斎藤義龍は罪の意識により得道(出家)して「はんか」と名乗った。

(2)唐に「はんか」という者がいて、父親の首を切って「孝」となった。

 

史実では、道三が死ぬ前から義龍が「范可」と署名した文書があるが、とりあえずそれは考慮しない。何度でも書くが。まずは『信長公記』は何と言っているのかを考察しなければならない

 

さて、ここで最大の問題点は、義龍は唐の「はんか」にあやかって、自らを「はんか」と称したのか?ということだが、少なくとも明確には「あやかった」とは書いていない。「古事あり」とは単に「はんか」という義龍と同名の人物が過去にいたというだけの話として十分解釈可能である。

 

単に過去に「はんか」という人物がいて、それと現代の「はんか(義龍)」を比較しただけの話であれば特に問題は生じない。だが「あやかった」と解釈した場合は問題が数多くある。

 

まず、『信長公記』では、「はんか」は得道(出家)してから名乗ったのだから、法号だと考えられる。繰り返すが『信長公記』においてはであって、史実かは明らかではない(ただし普通に考えても法号であろう。でなければ何だというのだろうか?)とにかく少なくとも『信長公記』においては法号である。で、法号であるはずの「はんか」が「あやかった説」においては「人名」にちなんだというのだ。まずそれが有り得ないではないか。唐の「はんか」も法号だとしたら、それにあやかって義龍も「はんか」と号したという可能性があるようにも思われるかもしれないが、だとしたら唐の「はんか」は仏教の殺生戒を犯していることになる。現代日本の仏教観だとピンとこないかもしれないけど、そんな人物がプラス評価されて伝承されることもまた有り得ない話ではないか。

 

太田牛一がもし「あやかった説」を書いたとした場合、それが伝聞であろうと彼の創作であろうと、彼はそういう基本的な常識を持ち合わせてなかったということになるのではないか?しかし本当に常識を持ち合わせていないのは、これを「あやかった」という話だと解釈した側なのではないだろうか?

 

 

次に儒教の面から見て、唐の「はんか」は「父の頸を切りて孝と」なった人物である。具体的にはどういう状況でどんなことをしたのか全く不明だが、とにかく「孝」をなした人物なのだ。であるなら、父の頸を切ったことを罪と考える必要は全くないのだ。親孝行したことを罪に感じるというのはおかしなことではないか。むしろ罪を感じるのは親不孝だとさえいえるではないか。

 

よって、斎藤義龍唐の「はんか」にあやかって「はんか」を名乗るのなら、父を殺したことは親孝行であって、罪に感じる必要は全く無いし、出家する必要もない。もちろんしつこく繰り返すが『信長公記』によればということだが、「あやかった説」で解釈すれば、義龍が罪を感じるのは矛盾している。

 

しかし太田牛一はその矛盾については何も書いてない。唐の「はんか」は「孝」だが、今の「はんか(義龍)」は不孝・重罪恥辱だと書くのみである。それは牛一が「あやかった説」を書いてないからだとすれば何の問題もない。これは同じ「はんか」という名の人物だが対照的だというだけの話であり、『義龍は「はんか」と名乗ってるくせに』とかいった意味ではないと理解して全く問題ないのである。

落合洋司弁護士立憲民主党公認取り消しの謎

 立憲民主党から公認を取り消された弁護士の落合洋司氏(55)が4月2日、Twitterを更新し、韓国に関する一連のツイートについて、「ヘイトスピーチだった」と自身で認め、改めて謝罪した。

立憲民主党が公認を取り消した落合洋司氏が、自ら「ヘイトスピーチだった」と謝罪(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース

 

報道等によれば、落合弁護士がツイートで、「韓国のようなごろつき、三等国家」などとの発言を繰り返していたことがヘイトスピーチに該当し、立憲が公認を取り消し、落合弁護士もヘイトスピーチだと認め謝罪したという話として伝えられている。

 

だが疑問がある。「ごろつき」をヘイトスピーチだと落合弁護士が認めたのなら、なぜ落合弁護士は今に至るも該当ツイートを削除していないのか?

 

 該当ツイートは以下のまとめから見れる。

#立憲民主党 #落合洋司 ネトウヨ発言を指摘されツイ消しするも掘ってみれば出るわ出るわの全方位差別 - Togetter

 

 今年の2月9日と2月10日に「ごろつき」と書かれているが、リンクをクリックして確認すると本日4月3日11時現在まだ削除されていない。本人がこれをヘイトスピーチと認めて謝罪したのなら、削除するのが常識的な行動ではないか?なぜ削除されてないのか?

 

上のまとめのうち、現在は削除されているものが12件ある。ただし、ヘイトスピーチに該当するかもしれないのは、「食べ物に何か入れられるかもしれない」というのと、(男の子が)「これから反日の道を歩むと思うと」の2件。他は安倍首相批判だったり、左翼批判だったり。

 

 不思議な話ではないか?繰り返すが「ごろつき」が問題になって本人があやまちを認めたのならば削除されるのが常識的な行動だ。もちろん落合弁護士が常識的な人ではないので、謝罪したのに削除はしないという不思議な行動をしている可能性はあるが、そうではない可能性もある。今のところ本人が謝罪文以上のことを語ってないので不明だ。

 

そもそも、この一連の話の流れの中で、具体的に何が問題になったのか当事者は何も語っていない

 

可能性はいろいろ考えられる。

(1)「ごろつき」が問題視され、落合氏も認めたが、なぜか削除してない。

(2)立憲が「ごろつき」を含む一連のツイートを問題視し、落合氏も一部をヘイトスピーチだと認めたが「ごろつき」については認めず削除もしていない。

(3)立憲も落合氏も「ごろつき」に関してはヘイトスピーチだと考えていない。問題になったのは別の部分。

 

 

ところで、落合氏の「ごろつき」発言は

 というものだから、明らかに「国家」に対するものであって、人種・民族に対するものではない。合衆国大統領が「ならず者国家(rogue state)」というのとどう違いがあるのだろうか?なおrogue state」には「ごろつき国家」という訳語もある

 

(なお当然のことながら立憲民主党の政策と対立するから公認を取り消すというのなら何の問題もない。ここで問題になってるのはヘイトスピーチか否かである)

 

何がヘイトスピーチに該当するのかいったと確実なルールがあるわけではないので、これをヘイトスピーチだとみなすことも可能なのかもしれないが、「ごろつき(国家)」という表現がヘイトスピーチだというのは、誰もが納得できるものではないと思う。

 

で、上に書いたように現時点では立憲民主党も落合弁護士も「ごろつき」がヘイトスピーチだと明言していないのだから、それが問題になったというストーリーで議論されている今の状況はおかしいのではないかと思う。

 

立憲民主党や落合氏はもっと具体的な説明をすべきであろう。

 

ところで、「ごろつき」だとか、韓国に関することで議論されているのだけれど、落合弁護士のツイートのまとめを見ると、アメリカ人の蔑称が書かれている。これは明らかに人に対する差別語である。