江戸時代の庶民は天皇を知らなかった?

この手の話はよく目にするが、そもそも「知らなかった」というのが曲者。「存在自体を知らなかった」というのと、様々な種類の「存在自体は知っていたが云々」というのがある。それに、これらの話はネットで見る限りでは史料的な根拠はない。おそらくそうであっただろうという推測を述べたものばかり。


前にネットで見た情報(今は消えてる)では、兵士に「天皇陛下は」といったらなんのことか分からない。「天子様」といったら分かるというようなことが近衛師団長であった人の話に出てくるという。この話を講演でしたのは井上清という歴史学者だが、これにより、日本国民には「自分たちの政治的な指導者であるという自覚はほとんどなかった」ということを言っている。ただし、「天皇」の存在自体は知っていたということでもある。それにこれは「知らなかった」ということではなく、実際に明治以前の天皇が国民の直接の指導者ではなかったということ。


俺の個人的な感想だけれど、なんか、ネットで見かける多様な「天皇を知らなかった」論は「天皇を知らなかった」という言葉が独り歩きして、そこからの連想で話が発展していっている感じがするんですよね。