「正しい」の用法

ちょっと整理してみる。


俺はインフレターゲット政策を「正しい」とは思わないが、リフレ派がそれを「正しい」と考えていることは「認める」。「認める」とは「そういう考え方もありえるだろう」ということを「認める」ということ。


では、地球は平面か球体かという問題で、地球は平面だという主張を「正しい」と認めるかといえば「認めない」。なぜなら地球が球体だというのが「正しい」からだ。これだって突き詰めれば絶対的に「正しい」と断ずることはできないが、現在の科学では「正しい」と言い切ることはできる。インフレターゲット政策の是非にそこまでの「正しさ」は「ない」。


したがって、どちらを「正しい」とするにしても、もう一方の考えを「ありえない」と断じ、その背景に陰謀や何か別の思惑があるかのように決め付ける言論を軽蔑する。また、その知識を有しているはずの者がそれを持ち合わせていないかのように安易に決め付け「頭が悪い」と批判する言論も軽蔑する。


なお「インフレターゲット政策」や「リフレ派」のところに別の言葉をあてはめても構わない。最近だと神武実在論とか。


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ホメオパシーは「科学的に正しくない」。もちろん将来新たな科学理論が発見されて「正しい」となる可能性はゼロではないが、少なくとも現時点では「科学的に正しくない」。


ただし、この「科学的に正しくない」にはさらなる説明が必要。単に科学のある分野で現在は正しいと認められていないが将来「正しい」と認められる可能性があるものは山ほどあるだろう。だが、ホメオパシーはそういったものではない。


鍼灸は体に物理的な刺激を与えるものであり、それが有益な効果を生むかはともかく、何らかの物理的効果が生じることは間違いない。ホメオパシーにはそれがない。鍼灸ホメオパシーの違いは「鍼灸には効果が認められているものもある」というようなことではなく根本的に異なるものだ。そこをニセ科学批判・批判批判の両側で理解していない人が多数いるように思われる。ホメオパシーが「科学的に正しい」と認められる時があるとすれば、現在の科学全体が根本的にひっくり返る時であり、単に科学の一分野での新しい発見というような話ではない。


ホメオパシーは「科学的に正しくない」。しかし、世の中の基準は科学的に正しいか正しくないかで全てが決まるものではない。それは総合的に見て判断すべきものだ。そもそも何が害で何が益であるかは科学が決めることはできない科学の外から持ち込まれる基準である。確かにホメオパシーは科学的見地以外からみても弊害が発生している。しかし科学的に正しいものであっても弊害は発生するのであり、弊害があることをもって全否定することはできない。


それを踏まえた上で俺は個人的にホメオパシーは日本に不必要なものだと判断するけれど、そう考えない人がいることも尊重しなければならない。