『付喪神記』と『百鬼夜行絵巻』(その8)

付喪神記』(国会図書館本)に赤鬼と青鬼の「悪鬼」が登場することは既に書いた。彼らは器物が妖変した付喪神。実はそれ以外にも「鬼」が登場する。それが「護法童子







然るに第六日の後夜の時に御聴聞の為に、主上出御なるとて、御殿の上を御覧ぜらるゝに、赫奕たる光明あり。その中に奇異なる天童七八人、或は劒を提げ、或は宝捧をかたげて立ちけろが、同時に北をさして飛び去りぬ。是れ則ち、二明王の眷族、悪魔降伏の為に現じたまふらむと、渇仰の御涙叡襟をぞ湿ほしける。

「二明王の眷族」の「奇異なる天童七八人」が「護法童子」。(「二明王」が何を指すのか無知なのでわからない)。(追記5/2)不動明王降三世明王だそうだ。『日本文学大系 : 校註. 第19巻』(国民図書)。

【護法】より

…広義では,仏法に帰依して三宝を守護する神霊・鬼神の類を意味するが,狭義では,密教の奥義をきわめた高僧や修験道の行者・山伏たちの使役する神霊・鬼神を意味する。童子形で語られることが多いため護法童子と呼ぶことが広く定着している。しかし,鬼や動物の姿で示されることもある。…
護法童子(ゴホウドウジ)とは - コトバンク(世界大百科事典内の護法童子の言及)


で、俺が何を言いたいのか、ここまで読めばわかると思うけれど、
百鬼夜行絵巻』(真珠庵本)の鬼は「護法童子」なのではないか?
ということ。



この鬼など、上の画像と似たポーズをしてるではないか。


この仮説を正しいとすれば『百鬼夜行絵巻』の解釈は大きく変わらざるをえない。


絵巻の最後に「赤くて丸い物体」が出現し、妖怪どもはそれを恐れ逃げているが、実はそれだけでなく妖怪どもは左右(前後)両サイドから攻撃されて追い詰められているということになるではないか。


(もちろんこう解釈した場合には不自然な点もある。両サイド以外にも「鬼」がいることだ。一応は空から降りてきたと解釈できないこともない。また真珠庵本が粗本ではないだろうということは既に研究者に指摘されているから、真珠庵本からさらに遡ったものでは鬼のいる場所が違っていたかもしれない。そのあたりはさらに考えてみる必要がある)


(つづく)