これについては各社ほぼ同じ。一番早かったのは朝日だと思われるのでそれを引用。
東証、誤発注のジェイコム株売買停止に 事態収拾見えず
コンピューター上では、「1円」で出した売り注文の価格がストップ安となっていた市場価格「57万2000円」に自動更新されていたので、取り消し注文は「57万2000円」で出さなければならなかった。ところが、みずほ側がそれに気づかず、「1円」のまま取り消し注文を出したので、取り消しが効かなかった。このため誤発注の収拾策として買い注文を出し始めた。
この記事の日付は「2005年12月09日11時35分」。ところが、その前にこういう記事が「ラジオNIKKEI」にありました。
誤発注問題東証会見「決済は小手先でない処理必要」
みずほ証券側からの注文取消が上手く作動しなかったことについて東証側は、「67万2000円で初値がついた後は、1円の注文が値幅制限の下限の57万2000円の注文に変換されるが、みずほ証券側は取り消しの指図を1円で行ったのではないか。板情報は57万2000円に入っているので1円で探しても発見されないことになる」と話している。
この記事はYahoo!ニュースで「12月9日3時51分更新」です。
朝日の記事では、この情報の出所が書いてないのですけれど、こちらには「東証側」とはっきりと書いてあります。出所が「東証」であるのと「みずほ証券」であるのとでは、話が大きく違ってきます。しかも「ラジオNIKKEI」によると、東証側は「みずほ証券側は取り消しの指図を1円で行ったのではないか。」という推測を述べたにすぎません。
それはそうでしょう。東証側が、みずほ証券のシステムに精通しているとは思えません。
ちなみに、Yahoo!ニュースで12月9日15時54分更新の産経新聞の記事も、
みずほ証券誤発注 買い残し分損失90億円超
東証によると、取り消しができなかった原因はこうだ。
みずほ証券の注文は一円での売りだったが、これに買いが殺到し、注文は値幅制限下限の五七万二〇〇〇円に変換された。みずほ証券は五七万二〇〇〇円の売り注文を取り消すべきところを、一円の注文を取り消そうとしたため、プログラムは反応しなかった。
この間、東証側は対応をせかしたが、みずほ証券は「今やってます」と返答。東証は待ち続けた。そのうち、みずほ証券は発注取り消しをあきらめ、九時三十七分買い戻しに動いた。東証は誤発注に直接起因する混乱は収束に向かったと判断した。
と、「東証によると」となっています。
では、みずほ証券側は何と言っているかというと、
みずほ証が60万株誤発注=損失300億円にも−新規上場のジェイコム株売買(時事通信)
同社長によると、初めて売買が成立した午前9時27分ごろ、61万円で1株を売るところを1円で61万株売ると誤って入力。直後にミスに気付き、取り消そうとしたが東証の売買システムに認識されず、買い戻す処理に切り替え61万株の大半を買い戻した。
福田社長の説明によると、午前9時27分に営業職員が誤って「1株61万円」の売り注文と本来入力すべきところを「61万株1円」と入力。1分25秒後にアシスタントが誤入力に気づき、取り消しの手続きを数度取ったが、東証のシステムに認識されなかったとした。
と、「東証のシステムに認識されなかった」と言っているに過ぎません。なお、
みずほ証券誤発注 買い残し分損失90億円超
注文の取り消しがうまくできなかったのは、東証の定めた作業手順とみずほ証券側の手順に食い違いがあったためという。みずほ証券と東証のどちらに責任があるかについて、横尾敬介みずほ証券副社長は「完全にどちらに非があったとはいえない」と述べた。
「完全にどちらに非があったとはいえない」と、みずほ証券副社長は述べていますが、それが「手順の食い違い」であるかのように、記事からは窺えますけど、それは産経記者が二つの要素をつなぎ合わせているだけだと思われ、副社長の発言がそのことを指していると判断するのは危険であると思います。
この件について、俺は昨日の記事で疑問を書きましたが、取り消しができなかった理由が、本当に「システムの違い」という、ブログ界でも広く流通している理由であるのか、かなり疑わしく思っています。