二十世紀の終わりに

誰の賃金が下がったのか?または国際競争ガーの誤解: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

「誰の賃金が下がったのか?」という疑問に対して一言で回答すると、国際的な価格競争に巻き込まれている製造業よりむしろ、サービス産業の賃金が下がった。また、サービス産業の中でも賃金が大きく下がっているのは、小売業、飲食サービス業、運輸業という国際競争に直接的にはさらされていない産業であり、サービス産業の中でも、金融保険業、卸売業、情報通信業といたサービスの提供範囲が地理的制約を受けにくいサービス産業では賃金の下落幅が小さい。


図録▽産業別就業者数の長期推移(サービス経済化)
を見れば明らかなように第1次・第2次産業の就業者数が減る一方、第3次産業の就業者数は右肩上がりで増えている。製造業の賃金の下落は抑えられているかもしれないが、就業者数が減っているので総人件費は減っているだろう。一方サービス産業の総人件費は増えているだろう。


この記事には次のようなことが書かれている。

 このように考えると、衰退産業と成長産業といういいかたも気をつけなくてはならない。第1の需要要因によって影響されている限りは確かに、衰退産業と成長産業の区分けは分かりやすいが、第3の生産性格差要因によれば、生産性の伸びの高い成功している産業ほどシェア的には衰退するのである。農業も製造業も第1と第2の要因から縮小している面の他、生産性の伸びが高いためにシェア的には縮小している側面もあることを忘れるべきではなかろう。


製造業の就業者が減っているからといって日本の製造業が衰退していると単純に言えるわけではない。生産性が上昇すればより少ない人手で済ませることができる。


ところで20世紀の終わりに革命的な出来事があった。IT革命だ。製造業であるかサービス業であるかに関わらず事務系の仕事が大幅に効率化されることになった。となれば今まで事務職に従事していた労働者があぶれることになる。企業側がこの変化にどう対応すすかといえば、新卒採用を抑制する・もしくは止める。あるいは企業内で配置転換する(が馴染めずに退社するものも多い)。あるいは業績不振なら人件費抑制の最有力候補としてリストラされる。


日本企業の社員全般に言えることだが、特に事務系職員はつぶしがきかない。しかもどこでも事務職の人員は間に合っているので再就職は厳しい。


その受け皿となったのがサービス業であるのは疑いない。サービス業といってももちろん事務系の仕事ではない。新卒者もまた、景気に関係なく事務系の募集が減っているのだからサービス業への就職が増える。他に働き口がないのだから賃金が低くてもサービス業を選択せざるをえない。


そういうことじゃなかろうか?ド素人の考えだから間違ってるかもしれないけれど。


ただし、これが全てではなかろう。


特に重要なのはまさに「サービス業の低生産性」ではなかろうか。といっても賃金が高いということではない。


俺の考えではサービス業には低生産性であっても利益が出るのならそれで良しというようなところがあるんじゃないかと思う。それよりも数が大切であって、店舗当りや従業員当りの利益が低くても多く出店すれば総利益は増えるから。



なお、池田信夫氏の

>日本の会社の問題は、正社員の人件費が高いことにつきる。サービス業の低生産性もこれが原因。

という発言が槍玉にあげられているけれど、「正社員の人件費が高い」のではなくて、人件費の比率が高くても出店するというところに低生産性の原因があるように思われ。しかしながらそれによって雇用の受け皿としての役割を果しているという面もあるわけで…