宇喜多直家の死因は尻はす」説への疑問(その2) - 国家鮟鱇
のつづき
宇喜多直家の死因は「大腸癌」ではないかという説が近年多くみられるという。また『 戦国武将の病が歴史を動かした』(若林利光)は痔瘻癌を主張している。
直家の死因は「尻はす」と呼ばれる腫れ物で、膿の混じった血が出る病気のようです。それ以上のことは分かりませんが尻を文字通りに肛門ととるのであれば大腸癌が疑われますよね!
www.ganchiryo.com(筆者は馬渕まり氏。秋田大学医学部卒業、同大学院修了。)
「穴痔」「蓮痔」という痔瘻の俗称がある。瘻孔つまり穴がポイントなので、蓮は蓮でも葉や花ではなく、穴のある蓮根から連想され蓮痔となったものと考えられる。すると「尻蓮」で痔瘻を意味するということになる。痔瘻にともなう痔瘻がんという悪性腫瘍があり、直家の病気はずばり痔瘻がんであったということになるのだ。
『 戦国武将の病が歴史を動かした』(若林利光 神戸大学医学部卒業。若林医院院長)
正直この手の話はどこまで信用できるか疑わしいものだと思っているが、「下血」の症状から考えれば、そういった連想を医学関係者がするのには自然なことのように思える。ただし、この場合「尻はす」の「尻」は肛門に関係すると考えられているようだ。
だが「蓮根」という腫物は尻にだけ出来るのではなく、頭部にも出来る。
耳より下に流れて、少しの蓮根の跡、(『諸艶大鑑』井原西鶴)
またなぜ「蓮・蓮根」と呼ぶのかについては、レンコンの断面を想像しがちであるけれども(俺も以前はそう考えた)、「根太」「固根」と呼ばれる腫物と同種ではないかと思われ、「根太」は「根が太い」ということだとしたら、レンコンも根が太い(実際は根ではなく茎ではあるが)ので「蓮根(はずね)」と呼ばれた可能性があるのではないだろうか?よって「尻」だからといって肛門と結び付けられるとは言えないように思う。
だからといって直家の「下血の病」がガンであることを否定するものではない。つまり、宇喜多直家の死因はガンであって「尻はす」とは関係ないのではないか?ということ。
腫物の「尻蓮」(「しりばす」と読む)とは別に、「尻はす」というガンの症状があるうのなら別だが、おそらくそんなものは無いであろう。尻の腫物の傷から侵入した菌によりガンが発症する可能性も無いのではないか?(専門家ではないから知らないけど)
だとすれば、『浦上宇喜多両家記』著者の戸川達安は、「宇喜多直家は尻ハスという腫物を煩っている」・「宇喜多直家は死の前に下血の症状があった」という二つの情報を持っていて、両者が同じ話だと受け止め「尻ハス=下血の病」と理解してしまったのではないだろうか?
というのが現時点での俺の推理。
※なお上で大腸癌説を書いている馬淵まり氏は
近年書かれた読みモノでは「尻」というキーワードと出血から『大腸癌』では無いか?という説が多く見られます。
しかしながら『腫物』という表現は主に『皮膚に出来た病変』を指す場合に使われます。
大腸癌も腫瘤を形成するタイプがありますが体表から見ると目立ちません。また、「膿と出血を拭き取った衣類を川に流して捨てた」との表現からも『身体の表面にできた腫瘤から膿や血が大量に出た』と解釈することもできます。
この場合は『皮膚癌』の一種ではないかと推測。
と、こっちでは皮膚癌説を書いている。しかし『備前軍記』の記述は確かに腫物からの出血だが、『浦上宇喜多両家記』の「下血」を腫物からの出血と解釈するのはやはり無理があるのではないかと思う。