しつこく東証のシステム問題(ブログジャーナリズムの視点から)

この件に関しては前に取り上げている。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20060121/1137855093
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20060212/1139731656


もうこの問題に関心を抱いている人は(株に関心のある人以外)ほとんどいないと思われるが、それでもしつこく取り上げるのは、株式市場の問題として関心があるというよりも、「メディアリテラシー」の問題と、「ブログジャーナリズム」の問題として関心があるからである。もっと早く取り上げるつもりだったけど、最近ブログでもっと大きな話題があったので遅れてしまった。


ところで、個人が非営利でやるブログっていうのは、新聞やテレビと違って、締め切りがあるわけでもなし、発行部数や視聴率に縛られるわけでもなし(そりゃアクセス数は多少気になるが)、文字数や放送時間を気にする必要があるわけでもなし、気になることはとことん追求していくことができるメディアとして優れていると思うんですよね。だけど実際に活用されているのはそういうことよりも「速報性」。ネットでは通信社のニュースが流れているから、それを見つけて記事にする。その速さは朝夕にしか発行されない新聞や、ニュースの時間が決っているテレビより優れている。そして、ある事件が起きると短期的にその話題が怒涛の如く多数のブログで取り上げられ、次の事件が起きると、もう過去の事件として忘れ去られるというような傾向があるように感じる(あくまで俺の印象だけど)。話が逸れてしまった。このことについては、いつかまた書くかもしれない。


で、話を元に戻すと、実は東証処理能力に関する報道に対する疑問はすでに過去の記事でほぼ言い尽くしている。だが何の反応もない。まあそれは人気ブログに程遠い過疎ブログだから仕方がないが、知る限りでは似たような主張をしているものも見あたらない。何ともやりきれない。要するにフラストレーションが溜まっていたわけだ。


そう思っていたところに、以下の記事を見つけて多少不満が解消された。
東証システム問題を考える(前編) (ITpro)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060214/229237/

東証が取引時間を短縮した1月18日,筆者は,数人のマスコミ記者から「1日450万件のオンライン処理能力という制約は,簡単に解決できるものではないのか」という質問を立て続けに受けた。オンライン処理能力の問題であれば,1日単位でなく秒単位か分単位でとらえるはず。そこで筆者は「オンラインではなくバッチ業務の話ではないのか」と記者に確認したが,誰も筆者が言っていることの意味を理解できなかった。
 某テレビ局のニュースで,あるコンサルタントが「分散化すればトラブルは防げる」と繰り返し強調していた。この人はいつも“オープン・システムによる分散化”を唱える人だが,実は清算用のバッチ・システムが原因だったので,「大量バッチを分散処理すべきだ」という理屈に変えてしまっていた。
 これらの現象はテレビ局,コメンテータ双方の知識・情報不足を顕著に表している。そして一般の人々やITに詳しくない経営者たちには,知識や情報が不足したまま導き出された見解がそのまま伝わってしまっただろう。システムを知るものにとっては恐ろしい話だが,あまりに多すぎるパターンである。
 コメンテータはニュースを通じて商売しない方が良いし,記者は裏取りに慎重を期すべきである。ニュース番組の場合は時間的な成約があるため多少は寛容になれる面もあるが,安易すぎる報道姿勢は,マスコミにとって自殺行為である。


日付が「2006/02/17」なので、だいぶ前の記事だけど、見つけたのは今月初めで、それからいろいろあったので、取り上げるのが遅れてしまったんだけど、だけど今でも上の「マスコミ記者」のような勘違いをしている人は多いに違いない。そういう勘違いを修正する機能がブログに期待されるところだけど、俺の知る限りでは機能しているようには思えない。むしろ「勘違い」を増幅させているようにさえ思える。ちなみに俺は「ITに詳しくない」「一般の人々」の1人であるが、これに疑問を感じていた。別に自慢しているわけじゃなくて、結論ありきの思考法をしないで冷静に考えてみれば、そういう疑問は多くの人が感じることができると思う。いわんや「ITに詳しい」人においておや。


※ちなみに、レスポンス・タイムの問題だが、処理能力の問題とは分けて考えるべき問題だと思います。もちろん処理能力とレスポンス・タイムという二つの問題の上部には東証の経営問題というものがあるのですけど、それは個別の問題を別個に論じた上で、さらに上部の問題として論じるべきでものであります。そうしないと混乱を招きます。その後の報道を見るとレスポンス・タイムについては、システムはシステムでもコンピュータのシステム問題というよりは、日本の取引システム、すなわち板寄とか値幅制限とかがネックになってコンピュータに負担がかかるのが問題のようです。つまりこれを改善するには、単純に最新のコンピュータ・システムを導入すればいいというようなものではなく、抜本的な改革が必要だということだと思われます。