福井日銀総裁大炎上

先日、日テレの元アナウンサー薮本雅子さんのブログが炎上した。その時の俺の感想。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20060524/1148463837
要約すれば、あの時期に、ああいうことを書けば、批判がくるのは予想できるでしょうってこと。次にこう書いた。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20060528/1148831806
要約すれば、批判がくるのが嫌なら最初から言うな。批判がくることがわかっていても、自分が正しいと思うことを主張したいのなら堂々と主張すべきってこと。そして、批判がこないと思うのは知恵が足りないとも書いた。薮本さんが批判がくることが予想できなかったのか、本人はびっくりしていたように書いていたけど、本当のところは本人じゃないのでわからない。だけど、普通に考えれば予想できることだし、予想できなかったとしたら、かなりの世間知らずだと思う。


で、今回の福井日銀総裁が総裁就任後の村上ファンドに出資していた問題。
日銀の総裁が村上ファンドに出資していたことがわかれば、騒ぎになることくらい、普通の常識さえあればわかること。
それにもかかわらず、就任時に解約しなかったのはなぜか?何ら問題ないという確固たる信念があって、批判されれば正々堂々と正当性を主張するというのならわかる。しかし、それならば、あらかじめ追求される時のために、関係資料を保存整理して、すぐに提出できるよう用意しておくのではなかろうか?どうもそのようには見えない。発覚したときに理路整然と説明できていれば、(それでも俺は問題あると思うけど)混乱はある程度避けることができただろう。どうもそこがわからない。とぼけているのか?それとも本当にわからないのか?どちらにしろ、見ていて、日銀の総裁ともあろうものがと言いたくなる。


これに関してルールに反してないので問題ないという意見があるがどうだろう?そもそもルールに違反していないというのは本当だろうか?ルールといってもいろいろあるが、法令違反は本当に全くないのだろうか?もちろん「ある」という証拠は今のところない。だが「ない」という証拠もない。例の「悪魔の証明」を適用すれば、「ある」と主張する側に立証責任があることになる。とはいえ今回のケースでは「ある・ない」論争をしなければならないのは、そんな疑惑が持たれるような行動があったからだ。俺はコンビニで食品を買って、いちいち毒見することなく信用して食べている。しかし不良品が何度もあったら、買わなくなるだろう。「過去に問題があろうとなかろうと大事なのはそれが安全かどうかだ」なんてことは立派な話だが、いちいち確認しなればならないということを考えれば、信用するかしないかで決めたほうが低コストだ。同様に、日銀総裁が私腹を肥やしているなんて疑惑は、それが真実であろうとなかろうと、いちいち検証しなければ信用できないなんてことは、それだけで余計なコストがかかる。


そのことがわかっていれば、日銀総裁就任時に解約するべきだった。ちなみに、ファンドを2月に解約したことのみを取り上げて、違反か違反でないかと議論したところで意味がない。「解約した」ということだけでなく「解約しなかった」ことだって疑惑になるからだ。例えば株を所有している人が売ろうと思っていたところ、これから上がるというインサイダー情報を入手して売るのをやめたら摘発されるかといえば、証拠を掴むのは極めて困難だろう。「売ろうと思っていた」というのは通常、心の中にしかないのだから。決着は着かず疑惑だけが残る。「疑わしきは罰せず」だから罰することはできない。それを日銀にも適用して問題無しで好いのだろうか?好いわけが無いと俺は思う。


そして好いわけがないと思っているのは俺だけではない。だからこそ、「日本銀行員の心得」には、「現担当職務と個人的利殖行為との間に直接的な関係がなくとも、過去の職歴や現在の職務上の立場等に照らし、世間から些かなりとも疑念を抱かれることが予想される場合には、そうした個人的利殖行為は慎まなければならない。」という規定があるのだろう。それにも関わらず日本銀行が問題ないと言っているのは、つまり村上ファンドへの出資は「個人的利殖行為」に当たらないという理屈だ。だが、「世間の疑念」は現実に起こっている。「日本銀行員の心得」は日銀の内規だから、日銀がそう判断するのであれば、それ以上どうしようもない。だが世間がそれで納得するのか?無理だと思う。内規に違反していないというのなら、それはそれでいいけど、それは何もしなくても良いということではない。民間企業で問題が起きたとき、それが内規に違反していないので問題ないということがあろうか?消費者が納得しなければ売り上げが落ちるのは必定だ。疑念を晴らすなり、ケジメをつけるなり、何らかの対処をしなければならない。疑念が生じたということだけは疑いようのない事実なのだから。(ただし、ほとぼりが冷めるまで待つというのも選択肢の一つとして無いわけではない。信頼を回復することが肝心なのだ)


ブログの炎上を防ぐために気をつけることと、炎上した場合の対処法は、今回の福井日銀総裁の大炎上の場合にも適用できると思いますね。