うつろ舟の中の人

『兎園小説』によると、うつろ舟の中にいた女性を見た村の古老は、

「おそらく、この女性は異国の王の娘で、結婚後、不貞をはたらいたため船に乗せられて流されたのだろう」

と語ったという。(『新・トンデモ超常現象56の真相』太田出版


最近知ったのだが、実はこれにそっくりな話がある。

横山は、旅人を殺し金品を奪う盗賊であり、照手姫は本来、上皇法皇の御所をまもる武士である北面の武士の子であったが、早くに父母に死に別れ、理由があって横山大膳に仕えていた。しかし、判官の行為に怒った横山庄司親子は、人食い馬と言われる荒馬の「鬼鹿毛(おにかげ)」に乗せ噛み殺さようと企てるなど、さまざまな計略を練るが失敗。が、ついに権現堂にて酒に毒を盛られ、家来とともに死んでしまう。横山は、満重から財宝を奪い取り、手下に11人の屍を上野原に捨てさせる。この事実を知った照手姫も密かに横山の屋敷を抜け出したものの不義の罪により相模川に沈められかけるが、危ういところを金沢六浦の漁師によって助けられる。が、漁師の女房があまりに照手姫が美しいことを妬み、さまざまな虐待を繰り返し最後には、六浦浜で人買いの手に売り飛ばされ、各地に売られていくが、最後まで小栗への貞節を守り通す。

小栗判官(ウィキペディア)


照手姫は「不義の罪により相模川に沈められる」のだが、ここがそっくりだ。


こちらのページがさらに詳しい。
小栗判官5 水の女(み熊野ねっと)

注目すべきは、

 ゆきとせが浦の漁師たちはご覧になって、「どこからか祭りものして流したのだろう。見てまいれ」と申すのである。若い船頭たちは「承ってございます」と、見申し上げたところ、「牢輿に口がない」と申すのである。

というところ。「牢輿に口がない」とは、つまり密閉されているということ。これは「うつろ舟(うつほ舟)」のイメージにぴったりだ。


ちなみに、検索したら、『物語要素事典』の【うつほ舟】にも載っていた。
『物語要素事典』