応神天皇と気比大神(その9)

応神天皇と気比大神(その8)のつづき。


三品彰英『建国神話の諸問題』(平凡社)を読んでたら

 オホナムチという名はオオクニヌシよりもわかりにくいが、それだけに古いように思われる。ナムチのムチは神・貴人に対する尊称で、原義的にはチ・ツチ・イツと同義で霊威を意味している。ナはナヰ(地震)・ナヌシ(名主)・ナヨセ(名寄)などに見られるように土地・田地を意味し、一方動詞ナル(生・成)の語源ともなっているようである。すなわちナムチは土地の神(あるいは神霊)であり、いっそう具体的には田の神・生成の神を意味していると解してよかろう。したがってナムチは、その原義から農耕民族社会の国主といいかえてもよい。

と書いてあった。


これが現在でも通用する説ならば「ナの譲渡」とは「土地の譲渡」をも意味するだろう。


吉備津彦が温羅から吉備冠者の名を譲られ、ヤマトタケルがカワカミノタケルからナを譲られたという神話もそういう意味で解釈できるし、応神天皇とイザサワケの「ナの交換」もまた「ナ(名)」と「ナ(魚)」の交換というだけではなく「ナ(土地)」の意味も含んでいるのだろう…


と思ったのだが、「イザサワケ 三品彰英」で検索すると、その三品氏が応神の名前交換について何と言っているかというと「成人儀礼」だと言っている模様(原典に当ってみる必要があるけれど)。


不可解。