彼女の消費実態は枝葉の問題なのか?

NHK貧困報道”炎上” 改めて考える貧困と格差(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース

彼女の消費実態は「進学できない」という番組の中心的要素に比べて枝葉の問題なので、とりあげなかったことも問題ない。

だから「ねつ造」という批判は当たらない、と。

一見正論のように見えてしまうかもしれないがこれはおかしい。確かに「消費実態」は彼女が相対的貧困であれば、何に使おうが自由であり「相対的貧困だから進学できない」とは無関係だ。いやもちろん相対的貧困であってて倹約して出来得る限りの進学費用を用意しろというのも一つの意見である。しかし、ここは湯浅氏の主張に従っておく。


だが、NHKが進学できない理由を

理由は家庭の収入がある一定基準に満たない貧困状態にあるからです。

と言っており、これが相対的貧困のことなのは明白なのだから、彼女が相対的貧困なのか否かは重要な問題なのだ


さて、相対的貧困は世帯の可処分所得で決まるので、彼女の家が相対的貧困か否かは所得を調べなければならない。だが、それは不可能だ。では、どうすればいいのかといば「消費実態」から推測するしかない


推測に過ぎないじゃないかといっても、たとえば所得がゼロなのに何かを消費したならば、資産が無い場合は、借金してるか本当は所得がゼロではないかのどちらかである。月収が5万円しかないのに家賃10万の家に住んでいれば、やはり同様である。すなわち消費可能か否かで所得水準が本当か虚偽かわかる。


彼女の家が相対的貧困だとしたら月収14.4万以下なのは揺るぎようのない事実である。それをどう消費したのかは推測するしか方法はないが、ある程度は確実な推測は不可能ではない。彼女の家の家賃は住んでいる地域から推測できる(住所特定は決して好ましいことではないが判明しているのだから使わせてもらう)。彼女の通う高校もわかっているから通学費もおおよそわかる。スマホを持ってることもわかっているから格安スマホの可能性を考慮してある程度推測できる(実際はSoftBank 4Gだという話だが)。その他ヘアカット代等がかかることも当然推測できる。水道光熱費も節約するにも限度というものがあるからある程度わかる。食費は1食あたり100円が限界だろうから2人で1か月なら18000円、普通は4万円程度かかるからその範囲内だろうと推測できる(もちろんそれ以上の可能性もあるが)。そして一般的な母子家庭の2人暮らしの生活費は15万円程度という情報も複数ある。


それらを総合して考察すれば、全く不可能というわけではないが、極めてレアなケースだということが推測できる。しかもその場合は、一方では非常な倹約家庭であり、一方では子どもが散財する家庭であるという、不思議な生活をしているのだということになる。また、それが可能なのは相対的貧困の最上位の家庭だと推測できるが、NHkが彼女に注目したのは、そういう家を選んだわけではなくて「かながわ子どもの貧困対策会議」に参加していた彼女に注目したからなのであり、確率的には低くはないとはいえ不審ではある。


なお、不審な点といえば、彼女は会議において、

だが自分は「貧困」に当てはまるのかもしれない−。フォーラムの準備を進める部会に参加して、初めて感じた。

貧困問う青年の主張 神奈川県対策会議に高校生ら (カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース
「かもしれない」「感じた」と話しているのであり、そこには「自分の家庭の所得が貧困線を下回ることを知った」というニュアンスは全く感じられないのである。


彼女は「貧困」とは言ったが「相対的貧困」とは言っていないのではないか?


これだけの疑問点があるのに、なぜ疑ってはいけないのだろうか?

一方からは「相対的貧困状態でのやりくりの範囲内」だから「問題なし」とされ、

他方からは「衣食住にも事欠くような状態ではない」から「問題あり」とされた。

「そもそも相対的貧困ではない可能性がある」から「NHKに問題あり」という視点は全く無視されている。


本当に本当に本当におかしい。異常だ。


貧困家庭でも、自分のアルバイト代は全額自由に使えるという家もあるだろう。

それはその通りだ。まさに俺はそこがポイントなんだろうと思う。彼女は自分のバイト代を自由に使っていた可能性が高いのではないか?彼女は1日4時間の授業で4年生の定時制高校に通っている。バイトする時間はかなりある。だが、バイト代は世帯収入に含まれる。月収3万だとしても14.4万-3万で母親の月収は11.4万(児童扶養手当約2万を引けば9.4万ということになる。神奈川県の最低賃金は905円(10月から930円)。手取り8掛けとして概算11.7万。130時間働けば得られる収入。1日8時間労働なら約16日)。それは事情があるのかもしれないけど、2人世帯で11.4万(家賃6万)で暮らして娘は3万で趣味・娯楽というのは非常に苦しいだろう(通学費・スマホ代等は自分で払うとしても)。だから俺は娘のバイト代を世帯収入に含めず計算しているか、そもそも相対的貧困の定義を知らずに単に「貧困」だと言った可能性が高いと思う。


もちろん彼女の家が本当に相対的貧困の可能性は否定できない。しかし疑惑はある。NHKは確認したのか、しなかったのか明確に答えようとしない。「経済的に厳しい環境で生活する高校生」では答えになっていない。極端な話、年収1千万の家庭で親が900万豪遊してたら「経済的に厳しい環境で生活する高校生」になり得る。そんなことを知りたいのではない。相対的貧困だと確認したのかを知りたいのだ。


逆に彼女が相対的貧困でなかったとしても進学するお金がない高校生だということは十分ありうる。というか、相対的貧困でなければ進学する費用に困らないなんてことは無い。相対的貧困はそういう基準ではないのだから当然だ。