証券会社の主な業務

委託売買業務/自己売買業務/引受業務/募集・売出業務

 自己売買業務(ディ−ラ−業務)というのが、今回、みずほ証券の誤注文で大量に売られたジェイコム株を買って、「美しい話ではない」とか「火事場泥棒」などと批判されたところです。
 
 ところで株価はどういう理由で値が付くのかというと、基本は需要と供給のバランスによるものです。現在100円の株が、企業の業績が上がって将来200円になると予想すれば、200円になるまでに買えば利益が出ますし、50円に下がると予想すれば、早いうちに売っておくほうが損が少なくてすみます。基本的にはこういうことです。企業の価値が変化しなくても、金利が上下すると(予想すれば)株価は動きます。それ以外にも例えば楽天のTBS株買い集めのように、企業買収などによって株価は動きます。買い集めによって市場に流通する株が少なくなるので、株価は大きく動きます。
 需要と供給のバランスが株価に影響するということは、株を大量に所有するものが株式を現金化するため売りに出せば株価は売りが優勢になるので下がるということになります。その企業の経営状態に変化がなくても、金融情勢に変化がなくても下がります。なぜ売るのかといえば、相続税を払うためとか、借金の返済のためとか、それは様々でしょう。
 今回ジェイコム株が初値を付けた後、ストップ安まで下げたのも、買いに対して売りが多かったからに他なりません(もちろんこれは所有していない株を売ったという特殊なケースですけど)。ジェイコムという会社の経営に問題があったわけでないのはもちろんです。
 その会社の「本来あるべき株価」より下の値段で取引されていれば、そこで買えば、株価はいずれ元の株価に戻るであろうと予測されるので、絶好の買い場となります。逆に「本来あるべき株価より上の値段で取引されていれば、そこで売れば利益が出ることが期待できます。ただし株価は常に動いていますし、株価を決める要因は複雑なので「現在の本来あるべき株価」が何円なのかを判断することは困難です。困難ではありますけど、ある程度、この値段なら妥当だろうという基準を設けて、それより下なら買って、それより上なら売れば利益を出せることに理論上はなります。もちろん妥当価格の判断を間違えていれば、安いと思って買ったのに一向に上がらないということも十分有り得ます。

 証券ディーラーのお仕事は、基本的に長期投資でなく短期投資ですので、安い時に買って、高い時に売ることを繰り返して利益を出すということです。で、当然ながら、誤注文というのは、そんなに珍しいことではないけれど、それだけで利益が出せるほど頻繁にあるものであるはずもなく、日常的に起きる株価の「誤差」を利用して、利ざやを稼いでいるのであろうと証券ディーラーのことを良く知らない素人ながら考えるのであります。

 で、なぜ誤差が出るのかといえば、この会社の株価は何円が妥当だという判断が、そもそも人それぞれであるからというのもありますけど、それ以外にも、どうしてもその株を売らなければならないという状況もあるわけで、具体的には、上にも書いた「借金の返済」だとか「相続税の支払い」だとかの現金化の必要のためとか、あるいは「この株を持っているより、他の株を買ったほうが儲かると考える」、具体的には、A社の株を保有していれば1年後に10万儲かると予想するけど、B社の株式なら100万儲けることができると考えれば、A社の株を「妥当価格」より安く売ることは合理的な行動であって、決して「まぬけ」な行動ではないでしょう。

 もちろんそうであっても20万円損するのよりも10万円損するほうが望ましいのであって、ということは「ハイエナ」がたくさんいて「ハイエナ」同士で競争してくれれば、損が少なくてすむわけでありまして、逆に「ハイエナ」がいなければ、売りたくても売るに売れないなんて可能性もあるわけで、世の中にはそういう存在が不必要というわけでないことはおわかりいただけると思いますです。