「顧客対応より業績が優先されていた」

読売社説 金融商品取引法 「顧客本位」徹底へ準備は十分か

 一方で顧客軽視の表れとしか思えない事例も続いている。6月には、三菱東京UFJ銀行が投資信託の販売をめぐり、金融庁から業務改善命令を受けた。
 顧客からの注文を間違えて発注したのに、適切に損失を穴埋めしなかった例などが多数見つかり、金融庁は「顧客対応より業績が優先されていた」と、厳しく指弾した。

「業績優先」と書かれているけど、一般論として、単に顧客の注文と異なる商品を間違って販売しちゃったのなら、取り消して、本来の商品を売れば良いだけで、多少ロスが発生するにしても、大銀行からすればたかが知れている。人間のやることだからミスが発生するのは仕方のないことだし、そのくらいの損失はあらかじめ計算に入っていても良さそうなものだ。


じゃあ何で、素直に訂正して現状回復し、損失が発生したのなら補填しなかったのかといえば、そりゃ後々面倒なことになるからじゃなかろうか。というのも損失補填といえば思い出すのが、大口顧客に対する損失補填問題だ。利益が出た場合にはそのまま顧客の利益。損失が出たら、間違えたことにして取り消せば良い。顧客にとって有利なことだが、もちろん問題が大有りだ。

損失補填 – 問題点(ウィキペディア)


ただし、事務的なミスのような「証券事故」については、損失補填の禁止の対象から除外されている。除外されてはいるけれど、不正の温床になりやすいので、厳しくチェックされる。間違ったからって簡単に窓口で処理するわけにはいかない。上司への報告はもちろん、関係部署への連絡、金融庁への報告と、ミスした本人だけでなく、関係者を巻き込んで超面倒くさいことになるだろう。またそれによりミスをした支店の行内での評価が落ちることになる(もちろんそんなこと顧客の知ったことじゃないが)。だから、できることなら、トラブルを無かったことにしたい、内々で処理したいという欲求が発生するわけだ。


というわけで、「顧客対応より業績が優先されていた」という、「業績」の意味は、「銀行の業績」というよりも、「支店の業績」「支店長の業績」が優先されたということだろう。銀行経営者にとっては、発覚すれば、わずかな利益(謝罪するにも交通費等費用がかかるので赤字の場合もあるだろうが)のために、大損害を蒙るのであって、ハイリスク・ローリターンなわけで、勘弁してくれと叫びたいだろうが、それを防ぐシステムを作らなかったのは、もちろん経営者の責任ということになる。

② 顧客に謝罪し追認を得れば事案は解決するとの認識が、旧東京三菱銀行及び新銀行を通じ、営業店・本部関係部署にあった。そうした認識の下、営業店の法令等遵守(コンプライアンス)担当者も不適切な顧客対応を看過しており、現場における牽制機能は発揮されなかった。また、証券業務の事務処理ミスは、旧東京三菱銀行及び新銀行を通じ、行内事務表彰において損失額及び件数に応じた減点対象となっていたため、一部営業店長は損失による減点とならないよう行内表彰への影響を回避すべく、謝罪と追認により対応していた。このように、適切な顧客対応より業績が優先されるなど、顧客保護の精神の徹底が不十分であったと認められる。


株式会社三菱東京UFJ銀行に対する行政処分について金融庁