森永卓郎の説明不足

節約した人件費の向かった先 / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP


別に森永卓郎の主張が間違っているとか言いたいわけじゃなく、俺は素人だから良くわからないながらも、そういう面もあるかなとは思うのだけれど、そう思うからこそ、もっとちゃんと説明しろよと思う。

 例えば、2001年度から2005年度にかけての「雇用者報酬」の推移を見ると、8兆5163億円も減少している。ところが、企業の利益に相当する「営業余剰」は、逆に10兆1509億円も増えているのだ。
 非正社員を増やしたことで、4年間で8兆円以上も給料を減らしたのに、逆に企業の利益はそれ以上に増えていることを示しているのである。

では、人件費を減らしたことで企業が得た利益は、最終的にどこに行ったのか。
 一つは株主である。財務省が発表している「法人企業統計」でみると、2001年度から2005年度までの4年間で、企業が払った配当金は3倍に増えている。
 そして、もう一つは企業の役員である。やはり「法人企業統計」によると、2001年度から2005年度までの4年間で、資本金10億円以上の大企業の役員報酬(役員給与と役員賞与の合計)は、なんと1.8倍になっている。さらに、先日、日本経済新聞社が発表したデータによれば、主要100社の取締役の2006年度分の報酬は、ここ1年で22%も増えていることが分かる。
 この二つのデータを合わせると、2001年度から2006年度の5年分で、大企業の役員報酬は倍増している計算になる。具体的な額として、日経新聞には、今年の1人あたりの役員報酬は平均6000万円と記されていた。

要約すれば、人件費を約8兆円減らした一方で営業余剰は約10兆円増えた。そして配当金や役員報酬が大幅に増えたということ。なるほどとは思う。


だけど、人件費と営業余剰については金額を示しているのに、配当金と役員報酬に関しては「3倍」だとか「1.8倍」だとか書いているが、金額は書いていない。これでは利益の内、どれだけがそれに回されたのかが皆目わからない。まあ一次資料を調べればわかるのだろうが、まだ俺は調べていない。しかし、森永先生が知っているのなら読者に余計な手間をかけさせないで数値を示せよと思う。何らかの理由で、数値を示すことが不可能ならその旨記せよと思う。


だって、例えば最近小麦の価格が上昇して、製品が値上げされるというニュースがあったけれど、もし小麦の価格が10%上昇したのに、製品価格が100円から300円に値上げされたとしたら、それが小麦価格上昇のせいだなんて説明されて納得できるわけがないのであって、その理由で納得できる値上げ幅は10%上昇なら10円だ(正確には原価の10%だけどそこは大目にみて)。原価が上がりました、だから製品価格が上がりましただけでは、それが事実であるといっても、本当の値上げ理由がごまかされているかも知れないのだ。俺は経済についての素人だけど、このくらいはわかる。


だから、ちゃんと数値を示してくれないと納得できないし、示さないのには示さない理由があるのではないかという疑念も涌いてきてしまうのである。


ちなみに森永氏の「説明不足」については前にも書いた。こっちは「そういう面もあるかもしれない」というより、怪しげな記事だと思って書いたものだけど。
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