模範解答

上に書いた病院の未収金問題だけど、それはとても大事な問題で、真剣に考えていかなければならないと思うんだけど、それはそれとして、俺は別のことで興味を惹く。それは何かといえば、未収金が増えた理由。

市内では「公的な病院だから医療費を払わなくても受診できる」とのうわさが広まっており、それが一因という。
(未収金:うわさ拡大し5770万円に 浜松の病院 - 毎日jp)

未収金の増加は、医療制度改革に伴う患者の負担増などが背景にあるとみられる。
(県立2病院で未収金1億円超 - 中国新聞

請求漏れの原因について県病院事業局は「請求の手続きは、まず医師が書き、事務職員がチェックするが、その際、書き漏れとチェック漏れの両方がある。多忙な体制も影響しているだろうが、職員の資質や請求事務能力の向上を図るしかない」と話した。
(県立病院、報酬請求漏れ年1億 未収金累計18億円余 琉球新報

同本部は原因の分析を進めているが、医療費の自己負担割合のアップの影響が大きいと推測している。70歳以上の老人が01年1月に1割負担となり、03年 4月からはサラリーマンも2割から3割に上がり、支払い負担が増えた。専門の総合救急診療科を置く病院で未収金が多くなる傾向があり、保険証を持たずに救 急治療を受けた患者が治療費を支払わないケースもあるという。さらに、退院直前に病院を抜け出すなどモラルの低下もみられるという。
(都立病院:未収金が10年で倍増、05年度は13億円突破 - 毎日jp)

医療技術の高度化で高額医療が増えたことや、保険の自己負担割合が重くなったことで、払えない患者が増えたと病院局は分析している。
(診療費:県立3病院、未収金累計1億9700万円 法的対応や回収委託も /静岡 - 毎日jp)


ここに出てくる理由には、「自己負担増」というものが多いとはいえ、バラエティに富んだものになっている。なぜか?


それは多分、これが最近になって問題化してきたので、統一的な見解がなく、病院関係者や記者が独自に理由を考えた結果だろう。同じ新聞社でも地方によって理由が違っているのも、今のところ横の連携が取れてないからだろう。近年、未収金が増加しているのには、地域特有の事情もあるだろうけれど、全国的に拡大しているのであるから、そこには共通の理由があるはずだ。だけど、共通の理由があるといっても、見る人によって、異なった見解になる。それがむしろ自然なことだと思う。


ところが、これが古くからある問題、あるいは古くからある問題と類似した問題、あるいは新しい問題でもマスコミ・論壇等で盛んに議論される段階となると、画一的な理由が表明されることが珍しくない。そして、反論もまた画一的になっていることが珍しくない。言っている本人は、自分の頭で考えていると思っているのだろうけれど、マスコミや知識人の主張に影響され、知らず知らずの内に、物の見方が定まり、それに基づいた答えを出し、それがまたマスコミ・知識人にフィードバックされ、次第に固定化されていく。


話を未収金問題に戻せば、論壇での主張は、今後ほぼ間違いなく、それぞれの陣営の模範解答となる、医療制度改革の弊害・格差社会を強調するグループと、モラル低下を強調する二大グループに分かれるだろうと思いますね。