というわけで、俺は「稲生物怪録」に対する関心を失っていた。ところが、最近、あることを知って再び興味を持つようになった。
それは何かというと、「稲生合戦」の方の「稲生」(愛知県名古屋市西区稲生町)に、伊奴神社という神社があるということ。
「伊奴」と書いて「イヌ」と読む。
天武天皇(白鳳)2 年(673年)、この地で取れた稲を皇室に献上した際に社殿を建立したと伝えられる。
名古屋市の民話資料集の中に伊奴神社の犬にまつわる話が記載されております。今でもこの辺りは稲生町、又穂町という地名が残り、昔は庄内川の豊富な水を使って大変稲作が盛んであったところと云われております。
これにより「稲生とイヌ」に繋がりが出てきた。
つまり、「稲生平太郎」と「霊犬悉平太郎」とが繋がる可能性が僅かではあるがあるかもしれないと思えてきたのだ。
そういう目で見れば、前にも書いた
⇒稲生家の怪異譚の原典
による、「稲生物怪録」の類話である『今昔物語集』巻二十七「三善清行の宰相、家渡りする語 第三十一」に
他でもない、老狐が住みついて人を脅かしているのだな。鷹狩の犬の一匹でもおれば、皆食い殺させてやるものを。
と書いてあるのも意味ありげに見えてくる。
(つづく)
※ちなみに「稲生合戦」で右目の下に矢が刺さった前田利家の幼名が「犬千代」なのも面白い。