稲生物怪録(その5)

というわけで、「稲生物怪録」と「三善清行の宰相、家渡りする語 第三十一」と「悉平太郎」を読み比べてみる。


稲生物怪録」は、稲生平太郎の屋敷に毎夜、化け物が登場する。


三善清行の宰相、家渡りする語 第三十一」は、三善清行が旧家に引っ越すと、夜中に化け物が登場する。


「悉平太郎」は、旅の僧侶が人身御供の話を聞いて、夜中に隠れて様子を見ていると、化け物が登場する。

お坊さんは、耳を澄ませて体をじっと硬くして、ひつぎを見ていたんだと。
真夜中になると、森の奥のほうから人の声とも獣の叫び声ともつかねえおそろしげな声が聞こえて来たんだと。お坊さんは恐ろしくなって、ぶるぶるぶるぶる震えてしまったんだと。それでもじっとしていたんだと。
そのうちに、ドシンドシンと大きな音をたてて、今までに見たこともねえようなでっけえ化け物どもが現れたんだと。
化け物どもは、ひつぎの周りをとり囲むようにして、でっけえ声で歌い出したんだと。
 こよいおらっちのこのことは
 信州信濃の光前寺
 しっぺい太郎にゃ知らすなよ
化け物どもは、歌いながら踊り続けたんだと。

第三話 しっぺい太郎(いなさ観光ガイド - 浜松市引佐町観光協会


「悉平太郎」の場合、この場面が主題ではないので今まで気付かなかったが、改めて見てみると似ていると思うのだ。


そして、「悉平太郎」では化け物は霊犬しっぺい太郎に退治される。「今昔物語」では「鷹狩の犬の一匹でもおれば、皆食い殺させてやるものを」という台詞が出てくる。一方、「稲生物怪録」の「稲生」は「犬」に通じる。


てなわけで、なんか繋がりがあるような気がしてきたのだ。


だけど、正直苦しいとも思う。長々と書いてきたけどしょうもない結論。