結局どっちが正しいの?

若い人が本気で資産形成を図らなければならない理由 :投資十八番 
若い人が本気で資産形成?しなくてよい理由 - 常夏島日記


まず、元記事が何を言いたいのかというと「老後の資産」の話ですよね。

 50歳以上の世代がなぜこれほど金融資産を保有しているのかというと、
 ・退職金の存在
 ・子どもが自立し教育費負担から開放される
 ・年功賃金の頂上に達している
 といった要因があります。全体的には資産形成の面においては恵まれた世代だといっていいです。

これからの世代は彼等のような人生設計では資産形成できない可能性が高いから「本気で資産形成を図らなければならない」という話。


これはその通りでしょう。でも勘違いコメントが多い。これを高齢者と若者の資産格差と捉えるとおかしくなる。現在の高齢者と将来の高齢者の違いという話ですよね。高齢者を批判するコメントがあるけれど、その高齢者とはあなたのことです


ところで年功序列が崩れるということは、全体の賃金が減らないのであれば、相対的には若者の取り分が増えるということではなかろうか(実感はないだろうとは思う。一部の者だけが恩恵を受けるという可能性が高いだろうし)。で、そのフラット化した給料を今までのように使ったらだめですよ、将来のために貯蓄しましょうって話になると思うんだけど、違うかな?


あと、高齢化社会では生産性が上昇しなければ、労働人口が減るのだから、一人頭でみれば、現在の生活水準より苦しくなるのは当然だろう。で、その状況で資産形成をするというのはどういうことなのかといえば、全体では、相対的に資産を増やした人がいれば、逆に減らす人が出るということであり、個人の行動としては適切であっても、社会全体としては解決になってないということになるはず。さらに資産を形成したことにより、一方で弱者が増えて、そのための政府支出を賄うために税金(消費税とか)が増えるなんてことになれば、資産が増えても期待したほどには効用がないなんてことになるかも。


先に書いた「野菜が値上がりしたら云々」と同様、生産がなければ、どんな工夫をしようとも根本的な解決にならない。それを解決するのは、生産性を上げ、また労働人口を増やすということがどうしても必要になるだろうと思う。



次に、若い人は「資産形成」する必要がないという話。親に資産がないという突っ込みは個別には成立するけれど、少子化の状況では、親から相続できる資産が増えるというのも事実。四人兄弟と一人っ子では取り分が違う。だから、これもある程度正しい。特に言いたいのは金融資産よりも土地建物に関するメリットが大きいということ。親が一戸建て持っていたとしても、さすがにいい大人の兄弟が同居というわけにはいかないでしょう。それがまるまる相続できることになるわけだ。個人の支出における住宅費の割合は大きい。それが軽減されるということは、非常に影響力がある。


ただし、相続できる人とできない人の格差が拡大するという問題もある。これは現在それほど言われているようには思わないけれど、将来、特に低所得者にとっての大問題に発展する可能性があると思う。


これは前にも書いた。
家賃負担と貧富の差 - 国家鮟鱇


付け加えれば、給与所得者の中で持ち家がある人と無い人とでは、生活に必要な最低限度の所得が大きく異なってくる。すると一方は時給1000円以上ないと暮らしていけない。もう一方は700円とかそれ以下でも暮らしていける。雇用する側は低い賃金で雇いたいと思うのが当然だ。そこで持ち家の無い人は就職面で非常に不利な状況になるだろうということ。


これはもちろん現在でもあるだろうけれど、これから益々顕著になってくるはずだ。それに対し現在は「平等」という場合、賃金の平等ということが言われることが多いのであり、「所得格差」が声高に叫ばれている一方、「(家賃を除いた)消費力格差」はあまり注目されていないように思われ。