ということを考える前に「そもそも新聞は売れていないのか」というところからはじめる必要があるだろう。
それについては既に良記事があるので非常に助かる。
⇒1年間で114万部減……新聞の発行部数などをグラフ化してみる(2009年分データ暫定更新版):Garbagenews.com
そこにあるグラフを見ると、1997年の発行部数は5376万部(一般紙4726・スポーツ紙650)。2009年が5035万部(一般紙4566・スポーツ紙469)で、この間に341万部減っている。
減っているには減っているけれど、約6.3%減であり1割も減っていない程度の減り方ではある。しかも減少著しいのはスポーツ紙で181万部減(27.8%減)。一般紙は160万部減(3.3%減)にすぎない。
もちろん、この数字が信用できるのかという問題がある。広告料収入確保のために発行部数を水増ししているのではないかという疑惑はよく言われるところ。とはいえ、いわゆる「押し紙」で部数減をごまかしているとすると販売店の経営が破綻してしまいかねないので限度というものがあろう。というわけで、水増しがあるということを考慮しても、現状ではそれほど減っているわけではないと思われる(その僅かな減少でも経営に響くということはあるんだろうけれど)。
しかし、今後も安泰かというと、無論そうではない。上の記事にグラフがあるけれど、一般紙の発行部数前年比は2007年に-0.2%だったのが、2008年-0.9%、2009年-1.9%と減少率が急激に上昇している。新聞の危機は随分前から言われていたけれど、数字の上ではここ数年に現実のものとなって現われてきたといえよう。
もう一つ注目したいのは、上の記事にある「1世帯あたり部数」。1997年に1.18部だったものが2009年に0.95部にまで減少している。
これは発行部数の減少だけでは説明することはできず、記事にも書いてあるように「核家族化・世帯構造の変化によって、世帯数そのものが増加している」ということが大きい。
これには非常に重要な意味があると思う。一つは世帯数が増えているにもかかわらず、発行部数が減少しているということは、見かけ上の部数減よりも実際の「新聞離れ」が進んでいるということ。
もう一つは単身世帯あるいは二人世帯が増えるということは、新聞購読に必要な一人当たりのコストが上昇しているということだ。
以前と比較して新聞は一人当たりでみると割高になっている(しかも2004年に値上げまでしている)。その上、社会全体としては価格破壊で物価が下落しているのだから、割高感は大きい。
今はまだ新聞を購読することは人として常識だみたいな社会通念がまかり通っているようなところがあるけれど、メルトダウンする可能性は非常に大きいと俺は思う(それがいつかはわからないけれど)。