「冗談」と「事故」

希有馬氏の生活保護に関する銀英伝ネタの冗談とそれに対する反応 - Togetter


質問者は希有馬氏の「生活保護は悪」というツイートを追及している。それに対して「架空の団体・人物なんだから冗談だとわかるだろ」というような反応が多数あったわけだ。「救国軍事同盟」や「グリーンヒル大将」が架空の存在であることは調べればすぐにわかることだ。というか調べなくても日本に存在するものではないことくらい想像はつく。


問題は「生活保護は悪」の部分なんだから、その部分が「冗談」であっても、希有馬氏が「生活保護は悪」と考えているのかいないのかわからないと考えるのは凄く常識的な判断である。


にもかかわらず「冗談だとわかるだろ」という反応が多数あるのが非常に謎なわけだ。


たとえばアメリカではロージー・オドネルという人が、アジア人差別ジョークで非難を浴びている。
ロージー・オドネル:アジア人差別ジョークでアジア系コミュニティから大非難|ハリウッド・セレブ・ニュース

「これが世界中で大ニュースになっているんですよ」と言い、「中国ではこんな感じだと想像つくでしょ? 『チンチョン、チンチョン、ダニー・デヴィート、チンチョン、チンチョンチョン、酔っ払い、ザ・ヴュー、チンチョン』」

これがジョークだということは明白であって、批判に対して「これはジョークです」と何回繰り返したところで、何の釈明にもならないわけだ。

「誰かを傷つけるつもりはなかった」

と言って初めて釈明になるわけだ(それでも許してもらえていないようだが)。


なぜ「冗談だとわかるだろ」という答えになっていない答えがオウム返しのように繰り返されるのか?



で、ふと思ったのだが、漫画やアニメで男子が女子のオッパイを触ったとき
「これは事故だ」
という釈明をする場面がよくある。


国語辞典で「事故」を調べると、

1 思いがけず生じた悪い出来事。物事の正常な活動・進行を妨げる不慮の事態。「―を起こす」「―に遭う」「飛行機―」

じこ【事故】の意味 - 国語辞書 - goo辞書
とある。「思いがけず」とあるから、これは「意図してやったことではない」という意味で使っているんだろう。


しかし「思いがけず」とは事故に遭った人が「思いがけず」事故に遭ったということであって、事故を起こした方が「思いがけず」に起こしたという意味ではなかろう。「故意の事故」という言葉は普通に流通しているし。


しかがって、車で人をはねて「これは事故だ」と釈明したとしたら、おそらく「これが事故なのは当たり前だろ」と言われるだろう。この場合は「故意ではなくて過失です」と釈明しなければならない。



で、「冗談だとわかるだろ」に戻るが、それだけでは、悪意がある冗談なのかそうでないのか、本心が含まれているのかそうでないのかの説明にはちっともなっていない。生活保護を悪と考える人が架空の存在を使って「冗談」を言うことは十分にありえる。ネット上には差別主義者が差別ジョークを書き込んでいる例が腐るほどある。「冗談だとわかるだろ」では説明にちっともなっていない。


おそらく「冗談だとわかるだろ」と言っている人は「生活保護を悪だと本心で考えていない冗談だとわかるだろ」という意味で使っているように思われる。だが、そんな使い方は誰にでも通用するものではない特殊な使い方だ。


しかも、「架空の存在だから当人は本心で考えているのではないことがわかる」という謎理論でそう考えているのだとしたら、そんなもの通じないのは当然だ。