「独逸」について(その3)

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『泰西図説』とは

ドイツ人ヨハン・ヒュブネルの著『古今地理学問答』(1693年刊)のオランダ語訳本は、蘭学者の間で『ゼオガラヒー』(オランダ語で地理学のこと)と呼ばれていました。『泰西図説』(『泰西輿地図説』とも)は、朽木昌綱がこの『ゼオガラヒー』を抄訳したものです。寛政元年(1789)刊。

大名 - 47.泰西図説:国立公文書館


『厚生新編』は1811〜39年頃成立とされているから、それよりも早い。つまり『厚生新編』の「獨逸都」とよりも前に「度逸都蘭土」という表記があった。


気になるのは「度逸都蘭土」に「ドイツトランド」とカナを振っている点で、これは「ドイットランド」と読むのだと思われる。しかし「都」の読みは

ピンイン: (みやこ)dū (du1), (すべて)dōu (dou1)
ウェード式: tu1

都 - ウィクショナリー日本語版
とあり「ト」という発音は無い。もちろん日本では漢音で「ト」と読めるが日本語で読めば前に書いたように「ドクイツト」になってしまう。元はといえば中国で「ト」と発音していたのだろうし、18世紀でも「ト」と発音する地域があったということも考えられないことはないけれども。


ただ、『泰西図説』には他にもカタカナで「ドイツ」を表現したものが他にもあり、そこでは「ドイツランド」「ドイツ、ラント」「ドイツ、ランド」「ドイツランド」と表記が統一されていない。「ドイツ、ラント」の「、」の意味は「プロイ、セン」とか「ポルトガリヤ」とか多用されており、何らかの意味があると思われるがわからない。


いずれにせよ「度逸都」で「ドイット」なら「度逸」は「ドイッ」であり、「獨逸」も「ドイ(ッ)」としか読めないはずである。


それが「獨逸=ドイツ」になったのはなぜか?


「獨逸」は「獨逸都」を簡略化したものであり、「獨逸」とあれば「獨逸都」と書いてあるとみなして「ドイツ」と読むのか?

それとも「Duits」の漢訳音訳語として「獨逸都」とは別に「獨逸」があるということか?
その場合「ドイツ」を音訳したのが「獨逸」なのか?それとも耳で聞いて「ツ」が聞こえるか聞こえないかだったので「ドイ(ッ)」を音訳したのが「獨逸」で、カナを振る場合には「ドイツ」とするのか?

それとも本来は「獨逸都」と書くべきところを「逸」が日本では「イツ」と読めるので「獨逸」になってしまったということか?


結論は出ないけれど新情報が無ければこれでおしまい。