ここがわからない 「なれ合い売買」

絶対におかしいって自信があるわけじゃないんだけど、何か違和感があるんですよね。


村上ファンドライブドア側と「なれ合い売買」(毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/murakami/news/20060623k0000e040065000c.html

 証券取引法違反インサイダー取引)容疑で起訴された「村上ファンド」前代表、村上世彰(よしあき)被告(46)とライブドア(LD)側が、05 年2月8日にニッポン放送株を売買した時間外取引は、売買時期や価格を事前合意した「なれ合い売買」だったことが東京地検特捜部の調べで分かった。なれ合 い売買は、相場操縦の一種として証取法で禁止されており、罰則はインサイダー取引より重い。LDが同放送株を大量取得した際、村上ファンドとともに違法行 為を行っていた実態が判明した。
 ただ、当時は銀行による株の大量保有が問題となり、市場での放出によって株価下落を招かないために、時間外取引の利用を国が推奨していた事情があり、特捜部はなれ合い売買容疑での立件を見送るとみられる。

(中略)

 この際、売買価格はフジのTOB価格より高い6050円とし、2月8日午前8時24分に、村上前代表は同放送株125万株を時間外取引で放出しLD側が 買い付けたが、価格だけでなく売買時期も事前に合意していたことが新たに判明した。証取法は159条で、売り手と買い手が事前に売買時期や価格を決め取引 する行為を「なれ合い売買」として禁じており、違反した場合は5年以下の懲役か500万円以下の罰金に処される。

(以下略)


俺の知ってる「なれ合い売買」っていうのは、ある株式をAとBが売買時期と価格を事前合意して市場で取引すること。ここまでは上と同じなんだけど、目的はその株の取引量を水増しさせて市場参加者に誤った判断をさせること。ネットで言えば、お互いにブックマークしあって、はてなブックマーク人気エントリーに登場させ、第三者のアクセス数を稼ぐ行為とか、掲示板のスレッドが盛り上がっているように見せかける行為。要するにサクラ。


証取法159条で禁止されているのだけど、「誤解を生じさせる目的をもつて、次に掲げる行為をしてはならない。」と書いてある。この「誤解を生じさせる目的」というのは、上に書いたような、投資家の判断を狂わせようとする行為のことだと思うんですよね。


ライブドア村上ファンドは、「事前に」売買時期や価格を合意していた(とされている)ので、159条で禁止されている行為に該当するように見えるんだけど、「誤解を生じさせる目的をもつて」いたかというと、それはなかったのではないかと思うわけ。つまり上のような行為は、実際は本来不必要な行為であって、実体のない取引なんだけど、ニッポン放送株の取引は、村上ファンドからライブドアに株の所有権が移転しているわけで、実体を伴う取引なんですよね。同様に銀行の保有株の処分も、形だけのものではなくて、実際に所有が移動している。


これを「なれ合い売買」と呼ぶのかなあ?というのが疑問。そして特捜部は「立件を見送るとみられる」というけれど、そもそもそれで立件しようなんて最初から検討なんてしていないんじゃないのかという疑問があるんですよね。これは知る限り毎日新聞しか報道してないし、要するに毎日記者の早とちりじゃないのかと…これを安易に信じて「ルールを恣意的に運用」云々とか論じると話が変な方向に行ってしまうのではないかと…


まあ自信ないんだけど。


で、問題になるのは証取法159条じゃなくて「27条の2」のほうなのではないか。
つまりTOB規制は市場内取引には適用されない(当時)けど、実質的には事前に市場外で取引が成立していたのではないかと。


過去の記事を調べると、


【事例研究】ニッポン放送を巡る、ライブドアv.フジテレビvol.5(ライブドアによる株式取得パート2)([戦う企業法務弁護士]ALY's Transactional-Law)2005年03月04日
http://aly.livedoor.biz/archives/15542589.html

ニッポン放送の主張が認められるためには、時間外取引以前に相対取引が成立したといえることが必要です。


【その12】ライブドア堀江社長)のニッポン放送株取得(インターネット失敗百選)2006年01月23日
http://blog.goo.ne.jp/error100/e/721734946487ac9b23c137f6bf8fca7f

しかし、ライブドアと売り手との間に売買に関する「事前合意」があれば話は別だ。堀江社長が2月8日の東証の取引開始後わずか30分の間のうちに6件の巨額時間外取引を成立させて、ニッポン放送の株式の35%を一挙に押さえたと言われるが、これは偶然(堀江氏は売り手の顔を知らない)ということになっている。合法の根拠となる部分だ。

なんて鋭い記事が出てくる。両方とも最近更新されてないのが残念だ。


それとこれ。俺は立花隆をあまり信用してないんだけど、これは注目してもいいかもしれない。
第4回 時間外取引村上ファンド、顧問弁護士解任の舞台裏 - 立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」(2005年3月25日)
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/050325butaiura/


(その他参考リンク)
ライブドアによるニッポン放送の買収について(早稲田大学)2005/3/7
http://www.asahi.com/ad/clients/waseda/opinion/opinion128.html


佐々木憲昭議員の質問部分】大阪証券取引所の情報漏洩問題について「徹底した調査を」佐々木議員(日本共産党 衆議院議員 佐々木憲昭)2005/4/20
http://www.sasaki-kensho.jp/kinyuu/article/kin_050420_r.html


ライブドア猪木弁護士辞任(isologue)2005/3/4
http://www.tez.com/blog/archives/000377.html


ライブドアニッポン放送事件」高裁決定全文(司法試験受験生の部屋)
http://barexam.at.infoseek.co.jp/note/livedoor_vs_lf.html
6 株式買収者の株式買収手段の証券取引法上の適否と現経営者による対抗手段としての新株予約権発行との関係について