柳沢厚労相バッシングの陰謀論的解釈

今回の柳沢大臣の失言問題。個人的には辞任するような大問題だとはどうしても思えない。俺が思わなくても他の人が思っているのならば、それは不自然なことではない。人の考え方は多様だ。実際、辞任するに値することだと思っている人はいるだろう。ただ、今回の辞任要求に関しては反自民的な人からも多くの疑問の声が上がっている。こういうことは珍しい。これをどう解釈すればよいのか。


政治の世界では、ライバルの失点をことさらに取り上げて、自分達の有利な方向に世論を導こうとするのは珍しいことではない。去年の米中間選挙では不利だと予想されていた共和党民主党の失言がないか調べまくっていたという。そして実際、ケリー上院議員の「勉強しないとイラク行き」発言が問題視された。こんなことは政治の常套手段であり、相手がそうすることは前からわかっているのだから、軽々しい発言は厳に慎むべきことである。


同様に柳沢大臣の発言も軽率であったことは間違いない。これによって大臣の評価は下がり、安倍内閣の評価も下がることは避けられない。だが、あまりにも厳しい責任追及は、かえって世間の同情を生む。「確かにこれは批判されるべきことだが、そこまで批判することだろうか。そういうお前はどれだけ立派なんだ」と。本来批判されるべき対象ではなく批判したほうがダメージを受ける。そういうケースは今までに何回もあった。それにもかかわらず、なぜ今回野党はこれほど強烈に柳沢大臣を叩くのであろうか?ここが不自然に感じる。


一つの考え方としては、安倍内閣の支持率が下がっている。追風に乗って、弱った相手をさらに攻撃することで戦果を拡大するという戦略的思考があるのではないかということ。ただし一歩間違えれば逆流する恐れがある。今、野党はかなり危険なところに踏み込んでいるように思える。野党にはそれがわからないということなのだろうか。過去の事例を見るに、そうなのかもしれない。だが、何か釈然としない。


釈然としないのは、経験則からいえば既にかなり危険な状態なのに、まだ危険ではないようにも見えること。それはおそらく自民党内にも柳沢大臣及び安倍内閣が窮地に陥っているのを内心歓迎している勢力が存在するようにみえるところにあるのだろう。ここに何か裏がありそうな感じ。民主党自民党の一部が裏で何か画策しているのではないか?そう思えないこともない。小沢党首ならやりかねないイメージもある。


ただし、さらに裏の裏を読めば、危険な場所まで野党を誘導して、そこで一挙に反転攻勢に出て、野党のイメージをダウンさせることを狙っているという可能性だってある。つまり撒き餌。政治の世界は陰謀が渦巻いている。だが、どんな陰謀があったのか知っているのはごく一部の人間で、我々には知る由もない。陰謀があるらしいように思えるが、どういう陰謀があるのかわからない。わからないものをあれこれ考えたってどうしようもない。


というわけで裏事情を考慮する必要など全くないわけで、一回りして原点に戻って、柳沢大臣の発言を個人的にどう思うのかといえば、最初に書いたように、そんなに大騒ぎするほどのことではないし、こんなことで審議拒否する野党は批判されるべきものであると、斯様に思うわけであります。