明治は良き時代

この時代の歴史に詳しくないんだけれど、右翼が政治的な意味で「明治は良かった」という場合、何が良かったと言っているのかという疑問がある。上にも書いたけれど、俺は明治維新は「革命」だったと思っている。明治という国家は「尊皇攘夷」を旗印にして出来たイデオロギー国家であった。

尊皇攘夷(ウィキペディア)

尊王論を支持したのは討幕派だけではなく、幕府もまた将軍が天皇を補佐するという範囲内での尊王であった。だが幕末に至り、幕府を倒し天皇親政を目標とする尊王論が活発となった。攘夷論とは外国人を実力行使で排斥しようという思想。


尊王攘夷を旗印として出来た明治新政府であるが、天皇親政は形骸化し、攘夷も富国強兵により実力を蓄えるという「現実的な」政策に変化した。新政府は「尊皇攘夷」を放棄したわけではないだろうが、有名無実化していった。(良く知らないのだけれど)当然、それに不満を持った人はいただろう。政府は矛盾していないと強弁するかもしれないが、明らかに矛盾していると。


で、「明治は良かった」と言う場合、このイデオロギーに忠実ではなく現実的な政策を取った時代が良かったと言っているのか、それとも現代と比べてみれば、尊皇攘夷思想が形骸化していたとはいえ、一応肯定されていた明治のほうがまだ良かったという意味なのかというのはかなり気になるところ。


ところで西部邁氏は「アメリカは左翼国家」だと主張しているが、確かにアメリカの理念は左翼的なものだ。しかし、その理念は行動を正当化するための理念であり、理念のために行動したフランス革命とは異なるというのが、保守思想の考え方だというのが俺の認識。もちろん、そうであっても理念を否定するものではない(できない)から、理念のほうが主になることもしばしばある。


日本においても尊皇攘夷を旗印にした明治政府は現実的な政治を行った。とはいえ理念がある以上、その理念でもって政府を批判する者は「正義」であり、理念を否定する反体制主義者とは違い、扱いには苦慮していたのではないかと思う(良く知らないけれど)。で、結局、「正義」がどんどん力を付けてきて悲劇を招いたと、そういう面があるんじゃないかと思う(くどいようだが良く知らない)。