『真書太閤記』の類話(その1)

今回は『真書太閤記』の類話について。


『真書太閤記『弁慶物語』の比較(近代デジタルライブラリーを参考にした)


○出生編


『真書太閤記

妻も気の毒に思い、なにとぞして男子一人授け給えと同村に鎮座ある日吉権現の社へ祈願を籠。夫に隠して日参怠りなく信心を凝らしけるか或夜此妻日輪懐中に入ると夢見て、それより只ならぬ身と成りぬ。

『弁慶物語』

そもそもこの弁慶と申すは紀州熊野の別当弁しんが子なりけり(異本:弁しん40にあまり50の年に至るまで、子一人も無かりける間に若一王子に参り申子なさせい申されけるに、鳶の羽を一云々)夫ふこれを悲しみ、若一王子へ参籠して申子をぞ祈りける。真に王子不憫にや思しけん、鳶の羽一つ給うと御夢想ありて、弁しんの北の方、やがて懐妊し給いける。


『真書太閤記

其の臨月を相待ちけるに十月に満るも何の沙汰なし。二ヶ月も過ぎ今や今やと相待ちけるに絶えて其の気色なく、漸く十三ヶ月目に当って天文五丙申年正月元日卯の上刻男子出生せり。