盛者必衰の理(その2)

「盛者必衰の理」のつづき。


下に引用する2冊の本は『平家物語』で平清盛が「悪人」とされているのかを調べるためではなくて、「heuristic ways」さんのところで紹介されていた川尻秋生氏の著書とついでに本郷和人氏の本も読んでみようと思っていたところ、両書ともそれに関連したことが書かれていたのであった。


将門記を読む』(川尻秋生編 吉川弘文舘)所収「文学から見た将門記」(佐倉由泰)

 たとえば『平家物語』は、平清盛の「悪行」が「悪因」となり、その「悪果」として平家が滅ぶという因果応報の構図のもと、基本的に、戦う二者を善と悪とに区分し、善と悪が戦って善き者が勝つ場合は、これを正義のための戦いと意味づけることになる。


『謎とき平清盛』(本郷和人 文春新書)

平家物語』は仏教の「諸行無常」の理念に基づいて叙述されています。「栄えるものは、やがて必ず滅ぶ」。滅びゆく平家に寄り添いながら、善悪の価値はとくに付与していません。平家は「善きもの」でも「悪しきもの」でもなく、ひとたびは栄え、「滅びゆくもの」なのです。


どっちが正しいんだ?しかも、どちらも「異説はあるがこちらが正しい」という話ではない。別の考え方など存在しないかのような異空間。


いや俺の知識と読解力が足りないからそう見えるのであって、両者は共存できるのかもしれないが…


※ なお、どっちにしても『平家物語』が鎌倉幕府に都合が良いように書かれたという話ではないとは思う。