『謎とき平清盛』(本郷和人)その2

その1

 また巷説の如くんば、御手の衆、過半帰国の由、驚き入り候、おのおの兵を労るは勿論に候、然りといえども、此の節、信長滅亡の時刻、到来し候の処、唯今、寛宥の御備、労して功なく候か、「不可過御分別候」、猶ふと彼の口上に候、恐々謹言、


本郷和人氏の口語訳。

 聞くところによると、あなたの兵の大半が帰国したとのことで、びっくりしています。それぞれの大名家が兵をいたわるのは当然ですが、織田信長を滅亡に追いつめる好機が到来したいまこの時、そのような優しい気配りは、かえって労あるのみで功績を台無しにするものといえましょう。「不可過御分別」。なお、使者に口上を与えたのでお聞き下さい。恐々謹言。

本郷氏によれば問題は「不可過御分別」の箇所で二通りに読めるという。それについては既に書いた。


しかし、俺の見るところ、本郷氏の口語訳には、それ以外にも問題がある。そこをどう解釈するかが「不可過御分別」の解釈にも影響する。


それがどこかというと…


(つづく)