「保守」とは何か?(その2)

政治思想としての「保守主義」というのはいつからあったのか?そこのところが俺にはよくわからない。もちろん源流はバークにある。ウィキペディアには

保守主義の源流はアイルランド人のイギリス下院議員でフランス革命を批判したエドマンド・バークに由来するとみなされている[3]。しかし、バークは「保守する」という言葉は用いたものの、「保守主義」という用語は使っていない。

保守 - Wikipedia
とある。すなわちバーク自身が自らを「保守主義者」と定義していたわけではない。彼はトーリー党(後の保守党)に対するホイッグ党(後の自由党)の幹部であった。


バークだけではなく、その他の保守主義者と呼ばれる人達も自分で保守主義者と名乗っていたわけではないと思われる。チェスタトンの著書には「保守主義者」に対する批判が書かれているし、ハイエクも「保守」を批判している。ハイエク自由主義者を自認しているけれど伝統や慣習を重視しており、彼を保守主義者と呼ぶのはふさわしくないとしても、現在一般的な自由主義者のイメージとはさらにかけ離れているようにみえる。


英国にはそのものずばり「保守党」という政党があるけれど、なぜ「保守党」というのだろう。検索すると

二大政党の一つ。王政復古期におけるトーリー党に起源をもつ。1832年の選挙法改正に対して,トーリー党はかたくなな態度をとった。党指導者R.ピールは,もはや自由主義的改革が避けがたい時代の潮流であることを悟り,党名を「保守党」と改めて,党のイメージ・チェンジをはかった。しかし彼はその後自由主義に傾きすぎて,穀物法廃止に賛成するにいたり,このため党内の地主勢力の反撥を買い,ついにピール派を率いて脱党した

保守党
という解説がある。「自由主義的改革」によって「保守党」と改名したというのが、どういうことなのかよくわからない。


米国の共和党保守主義の政党ではない(少なくとも過去においては)。

ニューディール以前には、どちらの党が保守主義者や伝統主義者や反動主義者の過半数を獲得するかは、五分五分というところであった
保守主義 ― 夢と現実』(ロバート・ニスベット)


現在の視点で保守主義者と呼ばれる人達は存在したが、彼らが自らを保守主義者だと考えていたとは必ずしもいえない。逆に当時保守主義者と呼ばれた人達の中には現在の視点では保守主義者ではない人も含まれていると思われる。なお「現在の視点」と書いたけれど、「現在の視点」が何かというのかさえ確固としたものではない。一応バーク流保守主義の視点ということにしておく。


というわけで、過去から現在にいたるまで「保守主義」の思想を持っていた人はいたけれども、彼らが自ら保守主義者と名乗っていたわけでも、他者が彼らのような人を保守主義者と定義していたというわけでもなく、「保守主義とは何か」を定義して、それで過去を見た場合に保守主義者と呼ばれるに相応しい人が過去にいたということであるように思われ。そしてそれは比較的最近のことであろうと思われ。


しかし「保守主義」という言葉自体は過去から存在しており、保守主義者と呼ばれていた人達がいたわけで、それが現在主流の「保守主義」の要件に合致していないということはありえるわけで、そのあたりが「保守とは何か?」という話を非常にややこしくしているのだろうと思われる。