「ごんぎつね」から何を学ぶのか?

ごんぎつねなんて勉強しても、社会に出てから意味が無いと言いますか? - 灰色の棚
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記事およびその反応を見て非常に不思議に思うのだけど、「ごんぎつね」って小学校国語教科書の教材なんですよね?道徳の教科書じゃないですよね。ましてや理科の教科書じゃないですよね。


だったら「ごんぎつね」を授業で学ぶというのは、文字の読み書き、「て に を は」などの文法、そして文章読解力などを学ぶってことですよね。


どう考えたって社会に出て役に立つことを学んでいると思うんだけど。


「それなら別の童話だったっていいじゃないか?」「いや、ごんぎつねは最適の教材だ。なぜなら…」みたいな話ならわかるけど、そういう話をしているようにもみえない。何が言いたいのかよくわからない記事。だけどそういうツッコミがない。


※ ちなみに俺の高校では英語の教科書を使わないで、なぜか「日本軍が中国で行った行為」みたいなことを書いた英文テキストのコピーで授業やっていた。まあ、これでも「英語の勉強」はできるのである。なおうちの高校の生徒で授業を真面目に受けているのはごく一部で、他は寝てるか、ジャンプ読んでるか、弁当食ってるか、参考書で自首学習しているかであった。


※ なおネットを見ると、兵十の母親がごんのいたずらが原因で死んだと信じている人が少なからずいることから考えて、学校でのリテラシー能力を身に付けさせる教育があまりうまくいっていないのではないかとは思う。

大人でも正しく理解できていない「ごんぎつね」

新美南吉 ごん狐(青空文庫)


「ごん」のいたずらが原因で兵十の母が死んだと理解している人が少なからずいる。ここをどう解釈するのかが大きなポイント。


1 兵十の母の死因は不明
わかっているのは兵十の母親が死んだということだけ。

「兵十のおっ母は、床(とこ)についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

これはあくまで「ごん」がそう考えたということにすぎない。「ごん」は人里にも行くので兵十の母が床についていたことを知っていた可能性もあるけれど、死んだことから遡って想像しただけかもしれない。読者には本当はどうだったのかわからない。病死ではなくて事故死だったかもしれないし、可能性は低いけれど自殺や他殺だったかもしれない。病死だとしても心臓発作等の突然死だったかもしれない。


2.兵十の母はうなぎが食べられなくて死んだのではない
そんなことはどこにも書いてない。そもそも作者もこんな反応は想定外だったのではないだろうか?「ごん」が思ったのは、兵十の母が「うなぎが食べたいとおもいながら死んだ」ということであって「うなぎが食べられなかったから死んだ」ではない。


うなぎを食べると精力がつくという話があるので、それと結びつけて考えてしまうのだろうけれど、そんなことはどこにも書いてない。単においしいから食べたいということかもしれない。これがうなぎではなくてスイーツだったらこんな連想は起きないだろう(もちろん「うなぎが食べたい」というのは「ごん」の想像であって兵十の母が本当にそう言ったという描写はどこにもない)


ただし、描写はなくても「ごん」の想像が当たっていたという可能性はなくはない。兵十の母はおいしいうなぎを食べたかったのかもしれないし、精力をつけるためにうなぎが食べたかったのかもしれない。しかし描写がない以上は不明というしかない。


したがって、そもそも兵十がうなぎを捕ったの目的が母親のためだということも不明である。というか網の中にはうなぎと「きす」がいたのであり「きす」が目的、あるいは種類にかかわらず魚を捕るのが目的でうなぎは偶然捕れただけかもしれない。母が望んだから捕ったのではなくて単に食料(あるいは売り物)として捕っただけかもしれない。


なお、うなぎを食べると精力がつくといっても、それで死にそうな人が治るかといえば大いに疑問。医学的にもそうだが、医学が発展していない時代でも、それで死にそうな人が回復するとまで考えていただろうか?


3 兵十は「ごん」についてどう思っているか
これも勘違いが多いのだが、兵十は母の仇だからゴンを撃ったのではない。いたずら狐がやってきたから撃ったのである(ここから考えても「ごん」のいたすらと母の死に因果関係が無い可能性が高い)。


兵十の母が「うなぎが食べたいとおもいながら死んだ」というのは「ごん」の想像であって、事実は全く異なるかもしれない。兵十は「ごん」が何を考えているのか知らないし、そもそも母の死と「ごん」を関連付けていない可能性が非常に高いのであって、すなわち「ごん」が何を考えているのかを考えることさえしていない可能性が非常に高い。だとしたら

「ごん、お前(まい)だったのか。いつも栗をくれたのは」

と言ったとき、何のためにそんなことをしたのかまで理解できなかった可能性は高い。



4 学校ではどう教えているか?
第4学年国語科学習指導案(佐賀県教育センター)(注PDD)

○兵十のおっかあは…」の会話文の接続詞(それで、ところが、だから)に着目させ、ごんの思い込みをどんどん膨らませている様子に気づかせたい。また、ごんの優しさや素直さを読み取らせる。

佐賀県の事例だけど「思い込み」ってしっかり書いてある。

フランスの「テロ賛美罪」

時事ドットコム:仏風刺芸人、検察当局が捜査対象に=「俺はクリバリ」とネットに書き込み

 バルス首相は12日、記者団に「表現の自由はあるが、テロ礼賛は見過ごせない犯罪だ」とデュドネ氏の言動を批判。

これを読んだとき「犯罪」というのは比喩的表現だと思ったのだが、調べてみたらフランスでは本当に犯罪なのであった。

(2) テロ扇動罪及びテロ賛美罪に対する刑が、5 年の拘禁刑及び 7 万 5 千ユーロの罰金. と、これまでより重くなり、インターネットを利用した場合には、7 年の拘禁刑及び. 10 万ユーロの罰金となった(第 5 条)。

⇒【フランス】[立法情報]2014年テロ対策強化法―インターネットによるテロの拡大―(PDF)


俺が無知だっただけかもしれないが、ネット検索してもこれに関する記事日本語情報はあまり無いように思われる(検索方法に問題があるのかもしれないけど)


なおイギリスにも同様の法律があり、こっちはそれなりに情報がある。
英国2006年テロリズム法―「邪悪な思想」との闘い (PDF)
これによれば、

主張の受け手となる公衆が、主張に掲げた行為が現状において彼らによって模倣されるべきものとして称賛されていると推論できること。

とある。


これって歴史上の出来事(たとえば桜田門外の変)とかも称賛すると処罰されるってことになるんだろうか?それとも対象外ってことになるんだろうか?日本だと幕末のテロリストが英雄になっている例が多数あって、それに自分をなぞらえるテロリストが出てくる可能性は十分あるだろうからアウトってことになりそうですよね。英仏ではそういうことを考える必要はなかったのだろうか?


それにしても明確に賛美しているならともかく、「俺はシャルリー・クリバリのような気持ちだ」と書いたからって直ちにテロを賛美しているということにはならないでしょう。もちろん逮捕されたわけじゃなくて「捜査を開始した」ってことなんだけど、それでも十分言論に対する圧力にはなるでしょう。


日本だったら「言論を萎縮させる」って話になりそうだけど…

犯罪とミュージックビデオ

「テロ賛美罪」について考えていて、ふと思ったこと。


俺はYouTubeで海外のミュージックビデオを見るのが趣味の一つなんだけれど、アメリカのヒップホップ系のビデオでは麻薬や犯罪絡みのものが結構ある。ギャングスタ・ラップって言うの?正直詳しくないけど。
ギャングスタ・ラップ - Wikipedia
当然、子供に悪影響を与えるといった批判もあるけど、スラムの黒人にとってはこれが現実なんだといった肯定的な意見もある。ともあれ法律で規制されていないから見ることが可能なんだろう。


一方、主にヨーロッパのダンスミュージックのビデオでたびたび見かけるのが、覆面をした男性2人組、あるいは男女、あるいは女性2人組あるいは3人組が商店を襲って店主を銃で脅したりして金を奪い、車で逃走してそのまま旅に出るというもの。ほとんどが結末で捕まるということもなくそのまま終る。


見るたびに「なんだこれは?」って思う。明らかに犯罪なだけでなく、銃などの人を殺傷できるもので脅すという点で非常に悪質である。それなのにそれを批判ではなく肯定しているように見える。歌詞はわからないけれど、おそらくは「自由」がテーマなんだと思う。


正直非常に不愉快だ。けれどみんながそう思えば、こんなビデオは国家が規制しなくたって流せなくなるのではないか?にもかかわらずそうはならない。ということは俺は理解できないけれど、このビデオに込められたメッセージを肯定する人が多いということなんだろうか?だとしたら、それが何なのかを知りたいのだが、言語の壁もありわからない。


一部の人に人気なだけで大多数に肯定されているわけではないのかもしれない。肯定はしないがそういうビデオを作る権利は守るということなのかもしれない。でも何か釈然としない。テロによる犠牲者もいれば強盗による犠牲者もいるではないか…



※どんなビデオがあるかすぐには思い出せない。

これは近いけど、結末で死ぬし、明らかに「俺たちに明日はない」を意識しているからちょっと違う(しかしこれも自爆テロの一種じゃないのか?)思い出したら貼る。


(追記)

これはソフトな方。まだまだあるはずだがいざ探そうとすると見つけられない…