東証の説明

 東証のシステムに不具合があったことはわかりましたけど、具体的にどういう不具合だったのか理解できますか?俺はいまひとつわかりません。
 ただ、おそらくこういうことだったのではなかろうかと思います。それについて書きます。

経緯

午前9時27分、ジェイコム株式に対し、みずほ証券が61万円で1株の売注文を、1円で61万株として発注いたしました。その際、同銘柄は67万2千円の特別買気配を表示中でしたが、当該売注文により約定成立要件が整い、売買が成立しました。ただし、今回の売注文が大量で初値成立後にも残っていたため、残存分は初値決定により設定された呼値の制限値幅の下限である57万2千円の売注文として登録され(詳細は後述いたします)、大量の買注文と間断なく順次約定していくこととなりました。その過程で、みずほ証券から当該注文に対する取消注文が発注されましたが、そのような例外的状況において生ずる不具合が売買システムに存在したため、取消しができずにその後も連続対当により約定が順次成立することとなりました。

現時点で判明している処理状況

新規上場銘柄の初値が決定した際には、当該初値を基準として同銘柄の呼値の制限値幅が設定されますが、この制限値幅を超える注文は、売買取引制度上、制限値段の注文とみなされます(以下「みなし処理」といいます。)。本事象は、このみなし処理が行われた注文に対する取消・変更処理の不具合であることが判明いたしました。
具体的には、ジェイコム株式について、特別買気配67万2千円が表示されている状態で午前9時27分に1円の売注文が発注され、初値67万2千円が決定いたしましたが、これにより呼値の制限値幅(上下10万円)が設定されました。この1円の売注文が大量で初値決定以降もなお残っていたため、みなし処理により呼値の制限値幅の下限である57万2千円の売注文として登録され、この後、67万2千円から順次買注文を消化する形で、約定を繰り返しつつ、値段が下落していくこととなりました。
このような状況下でみずほ証券による注文の取消しが複数回にわたって行われましたが、当該注文が発注された時点で板状態が対当中(約定処理中)であった場合に、対象注文が取消されないという不具合が発生いたしました。これは、みなし処理がなされ、それに対当する注文が存在する場合に生ずる不具合です。

http://www.tse.or.jp/news/200512/051211_a.html

 「新規上場銘柄の初値が決定した際には、当該初値を基準として同銘柄の呼値の制限値幅が設定されますが、この制限値幅を超える注文は、売買取引制度上、制限値段の注文とみなされます(以下「みなし処理」といいます。)。」ここにひっかかっている人が多いようです。マスコミ報道でも、この部分をやけに詳しく書いていたりします。
 一応説明すると、ジェイコム株式は9時27分、67万2000円の特別買気配であったところ、みずほ証券が「1円で61万株売り」の誤注文を流したため、67万2000円の初値が付きました。みずほ証券の売り注文には残りがあったため、その注文はストップ安の57万2000円の売注文となりました(ってまあ上に書いてあるまんまですけど)。しかし、これは別に異常なことではありません。「1円」という値段が異常だから、異常に見えるだけで、「57万1000円」で売り注文を出しても「57万2000円」の売り注文とみなされます。
 通常の取引と違うのは、この日が新規上場日であったため、初値が付くまで市場価格が存在せず、何円の注文であっても受付られるということだけど、それは新規上場の場合は当然そうなのであって、何も珍しいことではありません。みずほ証券も昨日今日できた証券会社じゃありませんから、当然そのことは承知しているわけで、システムもそれに対応したものになっているはずです。で、ストップ安の値段での売り注文は、要するに成り行き売り注文と同じですから、そういう売り注文が珍しいというわけもなく、売りに出したものの取り消すなんてことも珍しいものではありません。

 
 では、何で取り消しができなかったかというと、東証の今のところの説明では、よくわからないのですが、数量が大量であったことに原因があるように思われます。
 それを考えるに、新規公開株を公開初日に売るとは、どういうことかというと、公開前に株式を持っている人は限られた者だけです。まず公募株式を所有している人がいますが、通常、公募株式は一人一単位株しか割り当てられません。ですから売るといっても、一単位しか売ることはできないので、売買が成立すればそこでおしまいです。また約定前なら、約定処理は当然ありませんから、取消可能ということになります。
 次に幹事証券がいますが、幹事が成り行きで売るなんて、上場会社に喧嘩を売っているようなものですから、ちょっと考えられません。次に大株主等がいますが、大株主が公開初日に売るなんてことも考えられません。「冷やし玉」というものがありますけど、これは人気が過熱して初値が付かないときに、使われるものですから、場の買い注文に対応する売りしか出しません(このへん自信があるわけではないのであしからず)。
 ということは、公開初日に大量に売る可能性があるのは、公開初日に買い付けた者くらいでしょうけど、売るからには、利益が出ている場合がほとんどでしょうし、そういう状態なら、売り注文を出しても、すぐに売買が成立すると思われ、取消する余裕もないでしょうし、取り消そうとも思わないでしょう。 

 ということで、大量の下値での売り注文は、これまでも可能性としてはあったのですけど、実際にはなかったというわけです。(ただし、思うに数十株程度の売り注文なら今までだってあったのではないかと思うわけですが、そしてその中には取り消そうとしたものもあったのではなかろうかと思うわけですけれど、まさか東証のシステムに不具合があるなんて可能性を考えることもなく、数量も少ないですから、一部の約定処理も瞬時に行なわれ、売残りの取消しも行なわれ、不自然には見えなかったのかもしれません。)


 ここまであくまで推測で書いています。勘違い等あったら指摘お願いします。