悪女萌え

俺は淀殿が悪女として書かれている「江戸時代の戯作や講談」を読んだことない。読みたいんだけれどタイトル知らないし、活字になってないと読めない。


だけど、その「戯作や講談」でいかに淀殿が淫乱でずる賢い女性になっていたとしても、それだけで、彼女が貶められたとは考えられない。「戯作や講談」は庶民が読むものでしょう。幕府が世論操作するための工作をしたなんてことはちょっと考えられない。


工作するよりも淀殿や秀頼に関することは歴史から抹殺したいというのが本音でしょう。徳川が豊臣を滅ぼしたというのは江戸時代の道徳に照らし合わせてどうよってことになっちゃうでしょう。もちろん正当化できることはできる。徳川は豊臣の家来ではなくて、天下統一に協力しただけで主従関係はないって言ってるものもあるようで、それはあながち間違ってはないかもしれないけれど、みんながそれで納得すると期待することはできない。最後まで豊臣が生き残れるよう努力したっていったって実際に滅ぼしちゃったんだから、これも誰もが納得するわけじゃない。淀君や秀頼が愚かだといったところで、じゃあ愚かなら滅ぼしてもいいのかって、戦国乱世の時代なら主を見限るなんて普通のことだけど、江戸時代の倫理観ではこれもだめ。それに判官贔屓ってものがあるからどうしたって徳川は悪者になってしまう。


でも、実際に起きたことを抹消してしまうことはできない。それに大坂の陣で活躍した武将の家にとっては、それが歴史から抹消されてしまうなんてとんでもないことだから、幕府も配慮しなけりゃならない。だけど庶民に関してはその限りにあらず。つうわけで、太閤記物は何度も発禁処分になっていたわけでしょう。


で、幕府が工作したわけでもないのに、「江戸時代の戯作や講談」で淀殿が悪女になっている(いや俺は知らないんだけど、そういわれている)としたら、それはなぜかっていったら、そりゃあ「悪女」好きだからじゃないの?バカ正直に読めば、悪女けしからんってことになるけれど、実際はみんな密かに「悪女萌え」してたんじゃねえの?それを淀殿の亡霊が見たら喜ぶのか怒るのか知らないけれど。


なんて、史料も検証せずに勝手なこと言わせてもらってるけど、学者に淀殿は江戸時代に悪女として貶められたなんて言われても、それだけじゃ納得いかないんですよね。もちろんそれらは史実としての淀殿とは程遠いものだっただろう。歴史家はそれさえ主張できれば、後のことはどうでもいいのかもしれない。まあ「貶める」の定義の問題もありますよね。実在の人物像とは違っているから貶めたということもできるかもとは思う。でも一般のイメージとしての「貶める」では江戸時代に淀殿は良いイメージを持たれていなかったというようなものでしょう。本当にそうなのかって思うんですよね。