⇒内田 樹 「腐ったマスメディアの方程式」 君たちは自滅していくだろう | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]
テレビは見ない。新聞も本も読まない。マスメディアは世の中の急激な変化に戸惑うばかり。なぜ見なくなったのか。なぜ読まなくなったのか。内田教授はその理由を「作り手の劣化」と断じる。
たとえば、「かつての売れっ子歌手が最近売れなくなったのはなぜか」という問いがあったとする。それの答えが「音痴だから」というのは適切な答えだろうか。俺にはそう思えない。なぜならその歌手は昔だって音痴だったのだ。それにもかかわらず昔は売れていたのだ。「昔は音痴という短所を上回る魅力があったが今はただの音痴にすぎない」という話ならわかるけれど。
似たような話はよく見かける。たとえば、ファストフード会社の売り上げがなぜ落ちたのかという問いに、「あんな豚の餌みたいの食べられるか」みたいな答えとか。そういう考えの人は元々顧客じゃないので「なぜ売り上げが落ちたのか」の答えにはなっていない。
具体的な点に触れてみよう。
先日の民主党代表選の報道でも、とても気になったことがありました。
菅直人総理はじめ、政治家のぶら下がり取材をしている記者たちが、とにかく若い人ばかりなんです。
俺は業界の人ではないけれど、政治家のぶら下がり取材をする人は、昔から若い人が多いのだという認識をもっている。テレビなどで著名なベテランジャーナリストが若い頃を回想して、スタートは誰々のぶら下がりだったみたいな話をしているのを何度も見聞きしたことがある。
政治記者になると誰もがすること……それは「総理番」です。ソウリバン、ソウジバンじゃあないですぜ。総理担当って意味です。そうなんです。政治部ってところはね、新米の記者を総理担当にするんです。
⇒夏休み特集/政治記者の内輪話〔その1〕 新人記者が担当するのは、なんとアノ人! - 【政治】エンゼルあつみの永田町観察日記 | カフェグローブ
昔からそうだったものを原因とするならば、それがなぜ最近になって受け入れられなくなったのかということが重要な点だ。単に「欠点」を上げただけでは答えになっていないのだ。そんなことは普通に考えればわかることだ。
ヨーロッパから日本に帰ってくると、新聞のレベルがいきなり急低下してしまうので、本当にガッカリします。『ル・モンド』や『ガーディアン』は日本の新聞のように巨大な読者数ではなく、リテラシー(読解力)の高い少数の読者を想定し、それに向かって発信しているから、ずっと高いクオリティが維持されている。
それでも経営的には厳しい状況にあることはたしかですが、日本にも、少数ながら強いサポーターがついているクオリティペーパーのような新聞が必要でしょう。
「少数ながら強いサポーターがついているクオリティペーパーのような新聞が必要」なのかもしれないが、それは要するに今のようには売れない新聞だ。しかも、それらの新聞は「経営的には厳しい状況にある」のだ。
そもそも、このインタビューは何の問題について語っているのだろうか?内田樹先生が読みたい新聞について語っているのだろうか?新聞が売れない。だからどうすべきかという話で、今のままでは「先がない」というのは一つの答だろう。
この「先がない」とは文脈的にみて経営が成り立たなくなるという意味になるだろうと思う。しかし、質の高い新聞を作れば先があるのだろうか?そうあってほしいという願望を語るのは結構だけれど、それに先があるのかないのかについては何も語っていない(ヨーロッパでは「経営的に苦しい」と語っているけど、どっちにしろ駄目だと言いたいのだろうか?)そうではないようなことも語ってるし、よくわからない話だ。どうせそういう実際の経営的なことは真面目に考えてない空想的なもんなんだろう。
だけれど、そういう答えはウケが良い。適切な答えでないにもかかわらず、対象に不満を持っている人の受け皿として喜ばれるのだろう。かくして内田樹先生のような人にも需要があるってことなんでしょうね。