秀吉非農業民説

俺は豊臣秀吉が非農業民出身だと思っているけれど、一方で、巷に流布する秀吉非農業民説には怪しげなものが多いとも思っている。

木下姓も父から継いだ姓かどうか疑問視されていて、妻ねねの母方の姓とする説もある[1]。秀吉の出自については、ほかに大工・鍛冶等の技術者集団[3]や行商人[注 5]であったとする非農業民説[注 6]、水野氏説[注 7]、また漂泊民の山窩出身説[注 8]などがあるが、真相は不明である。

豐臣秀吉 - Wikipedia


山窩出身」というのは、「サンカ」がこの時代に存在したのかという根本的な問題がある。江戸時代の飢饉が原因で発生したという説があり、かなり説得力を持っていると俺は思う。「サンカ」を「漂泊民」に置き換えたとしても、秀吉伝説にそれを窺わせるものは無いと思う。確かに遠江まで行ったという伝説ならあるけれど、伝説が事実かも確かなものではないし、仮に事実だとしても、それをもって漂泊民だとするのはかなり無理がある。


非農業民説の中には、秀吉が非農業民であるということに特殊な幻想を抱いているようなところが感じられるものもある。それらは農業民中心史観の上に立った非農業民説とでも言うべきものだ。非農業民はそんな特殊な存在ではなかったはずだ。個人的には織田家には非農業民的性格を持った武将が数多くいると思っている。だから秀吉が非農業民の特性を持っているから出世できたなんてことは無いとも思っている。


(ただし妻の実家の杉原氏は同族が全国(特に中国地方)に存在し、そのネットワークが秀吉の出世に有利に働いた可能性はあると思う)


また、秀吉が下層民出身であるという説があるけれど、秀吉の伝記にそれを窺わせるものは無いと思う。確かに秀吉自身も自分が低い身分の出身であると口にしている記録があるけれども、ここで考えなければならないのは、秀吉が貴族になったということだ。貴族から見れば平民は低い身分に違いないし、出自が比較的はっきりしている島津氏などの名族よりは身分が低いというのも間違いない。だけど、それをもって下層民だったなどということもできないだろう。


あと、「木下姓」が妻の実家の姓だったというのは、極めて怪しい説であり、はっきりいってトンデモ説、しかもかなり低レベルな代物だと思う。この説が未だに流通していて、しかも歴史学者の中にも無批判で紹介している人がいるというのは不可解極まりない。


木下氏 - 国家鮟鱇