天孫降臨神話の真実(その3)

天孫降臨神話の真実(その2)
のつづき。


日本書紀』一書(第一)の神話と旧約聖書『創世記』の神話は似ている。


簡単に記せばイザナギイザナミ神話」は「アダムとイブ」、「天孫降臨神話」は「ノアの箱舟」に対応するということだ。


実に単純な話だ。単純すぎて拍子抜けするかもしれない。


だが、このことは重大な意味を持っている。その意味がわからなければ「まあ確かに似てるっていえば似てるかもしれないけれど…」みたいな話で終ってしまう。


というわけで、これの何が重要なのかについて説明する。


まずは大雑把な『書紀』一書(第一)と『創世記』の比較。


既に何度か書いたが『書紀』一書(第一)によると、「天神」はイザナギイザナミに地上を統治するように命じるが、イザナギイザナミは地上の主を生むことができなかった。その後イザナギイザナミの子で天上界にいたアマテラスの子孫が(アマテラスの命令で)天降りして地上の主になった。


一方、『創世記』では、神は男と女を創造し、彼らに「海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」と命じた。しかし神は悪が地にはびこっているのを見て悔い、人を滅ぼすことを決めた。だがノアの家族だけは助けることにした。洪水の後、神はノアに箱舟から出ることを命じノアとその家族はアララテ山上から地上に降りた。神は「地のすべての獣、空のすべての鳥、地に這うすべてのもの、海のすべての魚は恐れおののいて、あなたがたの支配に服し、すべて生きて動くものはあなたがたの食物となるであろう」と告げた。


1. 「神」は男女二人に地上の統治を命じた。
2. しかし彼らの子孫は地上の主にふさわしくなかった。
3. そこで再び「神」は地上の主となるべき者を地上に送り込む。
4. その者は最初の男女の末裔である。
5. その者は地上から一旦高所に昇り再び地上に降りてきた*1


これだけ類似点が揃っていて、両者が偶然似ているなんてことはありえない。


※ ただし『創世記』にある「洪水」が日本神話では欠けている。そのことについては後ほど。


(つづく)

*1:ニニギは高天原で誕生したと考えられるので厳密には違うがアマテラスが地上から天に昇ったということを考慮すべきだろう