早川由紀夫騒動(その2)

セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者がしたことと同じだ」

この発言の何が問題なのかっていうと、第一に「被害者である農家をオウムと同列に扱っている」ということだ。だけど「被害者なら毒米を作って良いのか」といえばそうではあるまい。早川由紀夫教授が言いたいのはそういうことだろう。


備忘録 - 我が九条−麗しの国日本
に引用されている早川氏と批判者の対話を見ると、意思の疎通が上手くいっていないのは明らかだ。

ニュース見ました。基本的に教授は間違ってないと思いますが、農家は国が安全だといったので作っただけで完全に被害者です。叩く相手を間違っています。

リラックマ氏)Twitter

と批判者がここで言う「被害者」とは、「原発事故の被害者」という広い意味ではなく、「国が安全だといったので作った」らセシウムが検出されて出荷停止などで被害に遭った「被害者」だと言っていると思われるが、こっちでは

原発事故で放射線を浴びた土地で農業をするという被害にあいましたよ。昔から農業を生業としてる人がそう簡単に仕事は変えられません。しかも作るなとは言われなかったのに作ったり出荷してから検出という目に遭ってます。

リラックマ氏)Twitter

と「原発事故で放射線を浴びた土地で農業をする」という点も含めて「被害者」と言っている。


しかし早川氏に言わせれば、

もし田畑が放射能を浴びたせいで耕せなくなったのなら、被害を受けたと思います。。

(早川氏)Twitter

ということになる。すなわち早川氏の考えでは、「原発事故で放射線を浴びた土地」での農業を放棄すべきであり、放棄したのなら「被害者」だが、継続して「毒米」を生産しているのだから加害者だということでしょう。


農家に「毒米」を作っているという認識を持って生産しているのなら、早川氏の言う通りだと俺だって思う。だが、農家に「毒米」を作っているという認識があるなんてことはない。


国は福島県の一部地域を米の作付け禁止とした。その地域で出荷目的で作付けするというのならば当然問題だ。だけどそれ以外の地域で米を作ったからといって直ちに問題になるわけではない。無論、禁止されていない土地で作ったから安全だとは断定できないし、実際に暫定規制値を超えるセシウムが検出されるということもあった。だが、あらかじめ検出されることがわかっていて米を作ったわけではない。


サリンが毒物だというのはサリンを製造する能力を持っているなら知っていて当然のことだが、米はそうではない。


もちろん批判者もその点に触れてはいるけれど、そこを重点的に突っ込むべきでしょう。



ただ、それで論争が終結するとは思えない。なぜなら「国が禁止していないから」で責任が無いといえるかといえば、必ずしもそうではないだろうと思うから(「お上の命令でやりました」といえば責任逃れできるかといえば必ずしもそうではないのと同じように)。


本来するべき議論はそこにあるだろうと思うけれど、そこまでなかなか行きそうにないだろうなとも思う。