日本語の命令口調

この記事超興味深い。
日本人は日本語に混乱している 週刊プレイボーイ連載(40) | 橘玲 公式サイト


ただし、橘玲氏の

日本語の複雑な尊敬語や謙譲語は、お互いの身分をつねに気にしていなければならなかった時代の産物です。それが身分のちがいのない現代まで残ってしまったため、命令形は全人格を否定する“上から目線”になってしまいました。日本語は、フラットな人間関係には向いていないのです。

という説明よりもコメント欄のATM氏の

「ステップバック」を例に出されてますが、これは日本語に訳せば「下がれ」という命令形と言うより、「後退」という単語の方がニュアンス的には近いと言えます。言ってしまえば、これはもう単なる単語だから腹が立たないのです。柔道の審判が「一本」とか「技あり」というようなものです。「一本取りました」とか「技ありになります」とか言いません。でも、これで腹を立てる柔道選手は居ないでしょう。もはや、ただの単語となっているため、敬語など使わなくても腹が立たないのです。

という解説の方がうなずける。


ところで命令口調といえば真っ先に思い浮かべるのが警官だ。いや最近の警官はむしろ一般市民に対しては丁寧な口調で語りかけているとは思うのだが(それでも怖い)。


昔の警官は一般市民に対してもそれはもうバリバリ上から目線の命令口調だったらしい。で、それに対する苦情が殺到して警察でも言葉使いを改めることにしたとかいうニュースを昭和40年代だったか50年代だったかに見たような記憶がかすかに残っている。何せ子供の頃の話だから曖昧な記憶だが。


で、何で警官はそんなに偉そうだったのかといえば「権力を持っているから」という答えが真っ先に思い浮かぶ。多分それもあるのだろうけれど、それだけではないようにも思う。


標準語に入った薩隅方言

標準語となった薩隅方言としてよく「おい」、「こら」と運動部などで体罰の隠語として使われる「ビンタ」の3つがあげられる。

藩閥による薩摩藩の警察官の薩摩藩出身者優遇によって、明治前期の警察官には薩摩藩出身の者が多かった。「おい」「こら(「これは」=「あなた」の意)」は彼らが市民の注意をひく際に用いた薩隅方言の言葉で、これが定着して、今日の標準語で広く使われるようになったもの。当初、薩摩藩出身者以外の市民がこれを理解できるわけもなく、薩摩藩出身の警察官は「おいこら警官」などと呼ばれた。

また「ビンタ」は薩隅方言では単に頭を指す意味に過ぎないが、その昔に大学の運動部や軍隊の下士官に多かった鹿児島県出身者が指導と称して後輩などの頬っぺたを引っぱたいた事を取り違えて定着したといわれる。鹿児島人は、気心がしれた相手や目下の人間に対してなんらかの動作を求める際に、関連の名詞などを無造作に言い放つ傾向が強い。他にも同様に薩隅方言の単語が別な意味として定着した例があると思われる。

薩隅方言 - Wikipedia


警官には薩摩出身者が多かった(今でもそうだとも聞く)。特に薩摩士族出身者が多かったので平民に偉そうにしたというのがあると思う。


さらに上に引用したように「薩摩方言」の問題もありそうな気がする。「おいこら」もそうだけれど、

鹿児島人は、気心がしれた相手や目下の人間に対してなんらかの動作を求める際に、関連の名詞などを無造作に言い放つ傾向が強い。

というのは大いに関係してそうな感じがする。


その方言に慣れていない人にとっては言い方がきつく感じられることもある。大阪人と東京人がお互いの言葉をきついと感じるという話はよく耳にするし。


丁寧語の効用は「身分差を明らかにする」ことだけでなく、「地域間の文化摩擦を解消する」ことにもあったのではなかろうか?


というようなことも、この問題に関わってくるんじゃなかろうかと思う(よくわからないけど)。