西王母と月

少し調べて見た。
西王母の原像 : 中国古代神話における地母神の研究(注:PDF)
によると、西王母月神と看做す文献史料はかなりあるそうだ。もう少し詳しく調べたい。


しかし、だからといって『淮南子』の西王母月神だとは限らない。


まして嫦娥が「月に帰った」のだとしたら嫦娥西王母に属す存在だということになろう。西王母羿(ゲイ)に与えた不死の薬を勝手に盗んたのだとしたら西王母に対する反逆であって、月に帰れずにどこかに逃亡するのではないか?それに、そもそも盗みなどしないで西王母に直接薬をもらえばいいのではないか?


※ なお、

淮南子』覧冥訓によれば、もとは仙女だったが地上に下りた際に不死でなくなったため、夫の后羿西王母からもらい受けた不死の薬を盗んで飲み、月に逃げ、蝦蟇になったと伝えられる。

嫦娥 - Wikipedia
とあるけれど、原文を見たら「もとは仙女だったが地上に下りた際に不死でなくなったため」なんてことも書いてないんで驚いた。おそらくは別の史料から元の神話を復元したってことなんだろうが、改めて原文確認の必要性を痛感した。



月は満ち欠けを繰り返すので不老不死と結び付けられたのは疑いない。『淮南子』の神話もそれを元にしているのだろう。


神話の成り立ちがそうであったとしても、神話自体はむしろ「月が不老不死なのはなぜか?それは嫦娥が不死の薬を持って月に逃げたからだ」というものではなかろうか。だとすれば、それ以前の月は不死ではなかったことになろう。『淮南子』の神話に西王母が登場するのは西王母月神だという思想の影響があるかは定かではないが、仮にあったとしてもこの神話における西王母月神としての性格は無いように思われる。


なお不老不死のイメージは月が独占しているものではなく、脱皮を繰り返すヘビなどの動物も不老不死のイメージを持っている。


もっと調べて考えなければならないけれど、やはり保立氏の解釈は現時点では納得いかない。