浦島太郎とウラシマ効果
ウラシマ効果とは
物理学者アインシュタインの相対性理論によれば、運動している物体の経過時間は、静止している物体の経過時間に比べて相対的に遅くなる。この現象は日常的には判らないが、光速に近づくと顕著になる(理論的には、光速に達すると時間は止まってしまうことになる)。そのため、光速に近い速度の宇宙船に乗って宇宙旅行をして帰還すると、地上では宇宙船での何倍もの時間が経過しており、宇宙船の乗組員は、さながら浦島太郎の様相を呈することとなる。そのため、日本では、この効果のことを俗にウラシマ効果と呼んでいる。(物理学用語ではなく、ふつう「ウラシマ」と片仮名表記する)。
『浦島太郎』と違うのは、当人はそのままの状態で、物語の浦島太郎の様に(玉手箱が存在するとして、それを開けたとしても)加齢すると言うことはない(のが自然である)。
複数のSF作家(豊田有恒や藤子不二雄など)が、この話を浦島太郎が宇宙人とともに亀(円盤型宇宙船)に乗って、竜宮城(異星)へ光速(亜光速)移動したために地球との時間の進み方にズレが生じたとする解釈を提示している。
この状態が、日本のお伽噺である『浦島太郎』において、主人公の浦島太郎が竜宮城に行って過ごした数日間に、地上では何百年という時間が過ぎていたという話にそっくりであるため、日本のSF作品などではウラシマ効果とも呼ばれる(SF同人誌「宇宙塵」主宰者の柴野拓美が命名者と言われる)。
命名者が誰だかは諸説あるようだけれども、近代デジタルライブラリーで浦島太郎関連を調べていたら『アインスタイン相対性原理の話』(原田三夫 著 現代社 大正12)で既にウラシマ効果とは書いてないけれど相対性理論に浦島太郎が取り上げられているのであった。
⇒近代デジタルライブラリー - アインスタイン相対性原理の話(コマ番号28)
相対性理論が発表されたのが1905(明治38年)で大正12年は1923年。しかも
アンスタイン相対性原理の時間に対する考へを説明するために、浦島太郎や芦生の例がよく引き合ひに出される。
と書いてあるので、既にそれが普及していたものらしい。
なお、ここで「芦生」とあるのは「盧生」(ろせい)のこと。
⇒邯鄲の枕 - Wikipedia
原田三夫氏は「浦島太郎の話の真偽」という章で
さうすれば、浦島太郎の話があつたかなかつたかは、光線に近い速さで飛べるか、飛べないかの問題できまる。芦生の話は芦生が一眠りの間に位人臣を極めた を見たといふまでゞあるから、相対性原理の引き合ひに出すには、少し不適當なやうに思はれる。
としている。
確かに長い時間を経たと思っていたら一瞬のことだったというのは、逆パターンであるから不適当なように思われる。ただし「胡蝶の夢」を当てはめれば、本当は夢が現実なのかもしれないと考えることもできなくはない。
⇒胡蝶の夢 - Wikipedia
そもそも宇宙船に乗っている人からは一瞬の間に地球では長い時間が経過していることになるけれど、地球からば、長い時間が経過しているのに宇宙船では一瞬しか経っていないことになるのではないか?
故に、単に「時計の進み方が異なる」ことが「浦島太郎」と似ているということであれば、「邯鄲の枕」を引き合いに出すのもまた不適当とはいえないのではないだろうか?
ただ、それだけでなく浦島太郎は光速に近い速さで飛んだかもしれないが、盧生は夢を見ただけでそういう要素がないからあてはまらないという意味かもしれない。
もしそういう意味なのだとしたら、これはこれで問題があるのではないだろうか?
その理由は
(つづく)