NHKとPCデポ

相対的貧困」は日本では馴染みのない概念である。


NHKもそのことはわかっていた。だから

6人に1人、厚生労働省がまとめた所得が、ある一定の水準に満たない貧困状態にある子どもの割合です。

というように、「相対的貧困」という言葉を使用せずに説明した。


だが、そこに登場した女子高生はまさに「貧困らしい貧困」だった。ここでいう「貧困らしい貧困」とは食うや食わずの「絶対的貧困」のことではなく、衣食住はそれなりに満たされてはいるが、パソコンを買えない、冷房を使えない、進学できない女子高生のこと。


しかし、その後ツイッターのアカウントが発掘されて、彼女は相当豪勢な消費生活をしていることが明らかになった。「騙された」と感じる人がいるのは当然ではないか。


まあ、言い分はあるでしょう。ちゃんと「相対的貧困」の説明をしましたよと。しかし「相対的貧困」とはどういうものなのか知らない人が大半だ。そのことをNHKは知っていたはずだ。


この構図はPCデポの問題とそっくりだ。PCに詳しくないお年寄りに必要とは思われない高価なサービスを勧め、解約しようとすると高額の解約料が請求される。法的には一応クリアしているのかもしれない。契約の際の説明書にちゃんと書いてあるとか、口頭で説明したとか。


だが、それで世間が納得するはずもなく。PCデポは「75歳以上の契約解除・コース変更は無償とする」などの対応策を示した。しかし未だに炎上は収まってはいない。


なお金融業界には「適合性原則」というのがある。

適合性原則とは顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないという規制のことである。こうした勧誘は投資家保護の意識に欠けるし、現実に投資家に損害を及ぼす可能性もあるからである。

適合性原則(てきごうせいげんそく)とは - コトバンク


NHKは明らかにこれを怠った。女子高生の「貧困らしい」面だけを強調し、それ以外を「相対的貧困」の知識に乏しい視聴者に知らせなかった。自信があるなら都合の良いところだけを見せなくても良いはずだ。


これだけでもNHKは(「貧困叩き」批判の側から見ても)十分批判に値するのである。


なお「貧困叩き」批判をする人たちも「1000円ランチ」をやたら強調する。しかし彼女の食事は「1000円」では決してない。なぜこのようなことをするのだろうか?高価な食事をし、その他を合計すれば平均的な高校生の消費を遥かに上回っているが、それでも彼女は相対的貧困だというのなら、正々堂々とそう主張すればいいだけであり、過小に表現する必要など無いはずだ。