「貧困」女子高生が進学するためには

昨日書いたように入学金が50万もする専門学校は無いと考えられる。「入学金の50万円」という数字の根拠が何なのかわからないが、とりあえず50万必要なのだということにしておく。では、彼女の進学が可能になるためにはどうしたらよいのか?


NHKのニュースは「相対的貧困」の問題を扱ったものだ。彼女の家が相対的貧困だというのは非常に疑わしいが、百歩譲って相対的貧困家庭なのだということにしておく。しかし、仮にそうだとしても相対的貧困層の最上位にあることは疑いない。


湯浅誠氏も

相対的貧困状態であっても上のほうは、衣食住にも事欠く状態ではない。

と書いている。
NHK貧困報道”炎上” 改めて考える貧困と格差(湯浅誠) - 個人 - Yahoo!ニュース


『本当の貧困じゃない!』と、叩いているだけじゃ貧困は無くならない。その事をどうか解ってほしい - 脱貧困ブログ
に「相対的貧困」に言及した記事のリンク集みたいなのがあるけれど、そういう説明をしているのは湯浅氏のみ。これ以外の記事も読んでいるけれども俺の知る限りでは湯浅氏のみ。今回の騒動で相対的貧困は衣食住に事欠く状態ではない」という誤った理解が広まった可能性は非常に高い。しかしそれが可能なのは上位の家庭で、さらに娯楽・趣味を楽しめるのは最上位である、


さて、女子高生の家庭は(本当に相対的貧困だったとしたら)相対的貧困の基準の可処分所得173万円の貧困線に極めて近い家庭である。仮に173万円ぴったりだとしたら、1万円給付すれば相対的貧困ではなくなる。


これで女子高生は進学が可能になるだろうか?「50万円」が必要なんだから不可能である。「50万円が必要で49万は用意してある」という解釈ができるかもしれないが、その場合、彼女の家は平均的な家庭以上の娯楽・余暇に使う金があり、さらに貯金もできるという非常に不思議な「相対的貧困家庭」ということになるだろう。


これを相対的貧困の解消という問題として扱う限り彼女の進学は不可能である。ただし、彼女が娯楽・趣味に使う金を進学のために蓄えるなら話は別。それだったら相対的貧困解消のための給付金と蓄えで進学が可能になるかもしれない。しかしそれを言うと、最近の言論界の主張からすれば「貧困叩き」とみなされるのだろう(給付金ではなく賃金引上げでも話は同じ)。


※ 奨学金制度使えば可能だろう。金利付きなら日本学生支援機の奨学金の要件を満たしていると思われる(学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる者)。今日のニュースによれば来年からは無利子の要件を満たすと思われ。


なお「相対的貧困の家庭の子どもの進学費用を無償にする」という方法もあるが、この場合、進学費用は高額だから、所得が173万なら無償なのに、200万だと無償じゃないのかという問題が生じる。それじゃ200万以下とすれば所得250万の家庭が、250万以下とすれば(以下略)。従って無償化するなら高校無償化のように所得制限は高いところに設けなければならなくなるだろう(高校無償化は当初所得制限はなかった)。すなわち、この方法の場合は「相対的貧困」の問題ではなくなる。


相対的貧困と進学問題を絡めると、このようなことになってしまうのだが、「貧困叩き」批判の人がそれを理解しているとは思えない。