アベノミクスと享保の改革

アベノミクスは、江戸時代に一度「大失敗」していた!(河合 敦) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)

最初に書いておくけど、俺はアベノミクスを支持してない。また享保の改革について詳しいわけでもない。でも、これはあまりにもひどすぎるのではないか?


まず前提として、享保の改革がなぜ行われたかというと「米価安の諸色高」の解決のためである。幕府の主要な収入源は年貢米だから米価が安くなるということは実質的な収入減。さらに「諸色高(物価高)」だから購買力も低下するというダブルパンチ。


それを解決するためにはどうしたら良いかといえば、一つは米価を上げること。堂島米会所はそのために開設された。また米の供給を減らすために諸藩に米の備蓄を命じた(囲米)。また米の需要を増やすために米を原料とした加工食品(日本酒等)も奨励した。


一方、物価高の方はどうするかといえば、物価を統制するという手がある。実際吉宗はその政策を取った。業種別の組合を結成させ幕府が統制し、商人が不当な利益を得ないようにした。ただ根本的な解決法は普通は供給を増やすか需要を減らすかということになるだろう。供給を増やすには技術革新により生産力を増やす方法があるけれど、当時はそれは難しかっただろう。また生産者を増やすという方法もあるけれど、逆に言えば農民を減らすということになるから江戸幕府の根幹に関わる問題であり、それも難しいと思われ。


というわけで、物価を下げる方法としては需要を減らすというのが手っ取り早いと思われ。「質素倹約」というのが幕府の財政を切り詰めるという意味ならば、それは確かに幕府財政の改善に寄与するけれども、武士や庶民が質素倹約したところで何の意味もない。だとすれば武士や庶民に質素倹約を命じる意味として考えらえるのは、経済政策上のことではなくて単に道徳上のことであるか、もしくは質素倹約させることによって需要を減らして物価を下げるためかのどちらかであろう。


一方、現在の問題は全く逆である。需要をいかに増やすかが大問題なのだ。経済成長がなければ税収が増えない。よって財政再建もできない。アベノミクスでやろうとしていることはそういうことであり、考え方としては別に間違ってはいない。


※ しかしながら既に日本は超低金利でありこれ以上緩和しても効果があるのか?とか公共投資を増やしても一時的なもので波及効果は小さく財政赤字が増えるだけではないのか?とか、成長戦略というけれど規制緩和とかはともかく、国が主導してもうまくいかないのではないか?逆に国が介入することによって市場が歪んでしまい自然回復力を阻害するのではないか?とか疑問がある。というか俺は「保守主義」なのでそもそも政府が景気を回復させるということに懐疑的なのである。


なお、俺は詳しくないんで疑問に思うこと。幕府の収入源は幕府直轄領(天領)。ただしまさに享保の改革のときに大名から米を徴収した(上米の制)。基本大名は独立採算だと思うので尾張藩が何をやろうと幕府財政には関係ないと思われ。何で吉宗が宗春と対立したのかがよくわからない。一般論として考えれば地方自治でその地域の実情にあった政策を取ればいいのであって画一化することはないように思う。経済政策上の対立だとしたらそれはどういうものなのか?それとも反抗的な宗春が気に食わなかったのだろうか?