不二家の何が問題なのかわからない不思議

ネット上では、不二家の何が問題なのかという声がよく聞かれるが、むしろ俺はどうしてそれがわからないのかがわからない。


不二家は期限切れの原料を使った。そのため、不二家の商品に不安を感じる人がいる。「一日くらい、期限が過ぎていても大丈夫」という意見がある。それが本当かどうかは置いておいて、仮にそうだとして、不安に感じる消費者は存在する。その不安に感じる消費者に、安全なのだから買えと強制できるだろうか?できるわけがない。消費者が何を根拠に商品を買い、何を根拠に買わないのかは、消費者の勝手である。消費者がどんなトンデモ理論で、物を買おうと、買うまいと、消費者の自由である。強制などできない。日本はそういう国ではない。


そして、人間は常に正しい判断で、消費行動をしているわけではないし、できるわけがない。というか人間にそういう機能は備わっていない。世の中には、「賢い消費者」と「賢くない消費者」がいるとは言える。「賢い消費者」が増えるのは望ましいこととは言えるかもしれない。ただし、現状は、どうみても全ての人が「賢い消費者」であるとはいえないし、おそらく将来もそうだろう。


そして、不二家にしろ、小売店にしろ、相手にしているのは「賢い消費者」「賢くない消費者」をひっくるめた「消費者」である。消費者が買ってくれなければ商売は成り立たない。正しければ商売が成り立つのではない。消費者の支持がなければならない。つまり「お客様は神様」。その「お客様」は常に「正しい判断」をするわけではない。というか、売り手からすれば「お客様の判断が正しい」のである。哲学者や芸術家なら、誰の支持を得られなくても、自分が正しいと信じることをすれば良いのかもしれないが、商売はそういうものではない。


不二家は、不祥事を起こせばどうなるか、あらかじめ予想できた。予想していなければならなかった。予想できるというのは、「期限切れを食べても人体に影響はなどという弁解で消費者は納得しないだろう」ということを含めて、予想できるということ。ここが理解できない人がどうも多いようで、それが何とも不可解。商売は消費者の支持がなければやっていけないのである。消費者の支持を失うことが、あらかじめ予想できること、未然に防げることを愚かにも不二家はやってしまったのだから、自業自得である。消費者の判断が正しいか正しくないかはこの際関係ない。過剰反応といったって、別に昨日今日始まったわけではない。前からわかっていたことだ。わかっていたから不二家は発表を遅らせたのだろう。しかし、発表を遅らせればどうなるのかもわかっていなければならないはずなのに、遅らせてしまい、事態を大きくしてしまった。経営の明らかな失敗である。


その結果、不二家及び関連会社の社員は将来に不安を抱えることになり、株価は下落し、取引先・小売店は迷惑し、不二家のファンは店で商品が買えなくなった。全て不祥事による被害者である。


だけど、納得いかない人も多いのだろう。「一日くらい、期限が過ぎていても大丈夫」「日本人は潔癖すぎる」。それはそうなのかもしれない、よくわからんけど。この不祥事をきっかけに、問題提起をするのも良いかもしれない。しかし、それで不二家の不祥事が帳消しになるわけではない。それとこれとは別問題。不二家が、日本人の過剰な潔癖症を変えようという信念のもとに、売り上げ減少リスクを覚悟して期限切れの食材を使用し、消費者に告知して販売したというのなら、話はまた別であるけど。