村上被告の背後にいる「巨悪」

一週間以上前の記事を今頃になって知ったんだけど、森永卓郎氏がこんなこと書いていた。これってどういうこと?


村上被告の背後にいる巨悪 / SAFETY JAPAN [森永 卓郎氏] / 日経BP

 今回の裁判によって、村上ファンドが売り抜けたニッポン放送株は、130億円相当だということが明らかになった。その金額のうち、村上被告自身が出資した比率を勘案して、11億4900万円という追徴金の数字が出てきたわけだ。
 問題は、この130億円という数字である。ライブドアが買ったニッポン放送株は約972万株。購入金額は580億2500万円ではないか。つまり、ライブドアは580億円あまりを買っているが、村上ファンドが売ったのはそのうちの130億円分でしかないというわけだ。比率にして、全体の22%に過ぎな い。
 ということは、残り78%分の株を売ったファンドなり個人なりが、別にいるということである。
 もちろん、正当な取引で売りに出されたならば問題はない。しかし一般常識で考えて、ニッポン放送という特殊な会社の株が、村上ファンドとたまたま同じ日の、しかも時間外取引の場に、ポッと売りに出されたなどということはありえない。誰がどう考えても、村上ファンドと示し合わせて、ニッポン放送株を 売りに出したのである。

ニッポン放送株取得を巡る話は、ややこしすぎて、何が何だかド素人の俺にはさっぱりわからない。プロでもよくわかっていない人がきっといると思う。結局何が問題なのか、森永氏はもう少し丁寧に説明してほしい。


2005年2月8日、ライブドアが時間外の市場内取引(ToSTNeT-1)で取得したニッポン放送株972万株の内、村上ファンドの売却分は22%であった。ということは残り78%は別の投資家から買ったということになる。ところで村上世彰氏の罪状はライブドアニッポン放送株を大量取得するという情報を事前に知りながら、株を買い集め、その後市場で売り抜けたということ。大量取得の情報が公開されれば、株価が上昇することが予想され、これは立派なインサイダー取引である。裁判の争点となったのは、村上被告が「聞いちゃった」情報の実現可能性であった。


一方、残り78%の売り方が、事前に村上被告と同様の情報を入手していたという証拠はない。証拠はないが常識的に考えてその疑いが濃いというような話でもない。ただ単に投資目的で株式を保有していたとしても不自然なことではない。


森永氏は、

 その仕掛けをつくったのは村上被告だろうが、そこに78%分の株を売った共謀者がいることは確かである。その共謀者たちも、間違いなくインサイダー情報 を仕入れているはずだ。だからこそ、村上被告に同調しようと考えたわけである。となると、村上ファンドと同罪ではないか。

と書くが、「間違いなく」と言えるほどの根拠が示されているようには見えない。説明不足すぎる。


だが、それでは何の問題もないのかというと、そういうわけでもない。ライブドアは時間外の市場内取引でニッポン放送株を一気に大量取得した。「市場外」で取得する場合は公開買い付(TOB)が義務付けられているが、「市場内」であれば問題はない(とされていた)。ところで売買は、買い方と売り方がいなければ成立しないわけで、時間外取引で、大量の買い注文を出したからといって、都合よく売りが出てくるとは限らない。というか常識的に考えて、まずあり得ない。事前に両者で合意ができていると考えるのが自然。ところが、それでは実質的に「市場外」取引をやっているのと変わらない。というわけで、あの取引はグレーな取引なのだが、2005年3月11日に東京地裁であった新株予約権発行差し止め仮処分決定での際、「違法とはいえない」との判断が出されているのであった。


「違法とはいえない」という判断があるとはいえ、どこかすっきりしないことは確かだが、それと、今回の村上氏の罪状と関係があるのかといえば、無いともいえないけれど、何かズレているようにも見え、チンプンカンプンなのであった。