国家社会主義

最近「国家社会主義ドイツ労働者党」の「国家社会主義」をどう訳すべきかという議論が行われている。俺はナチスに詳しくないので良くわからない。良くわからないんだけれども、なんか腑に落ちないものがあった。


俺には「national socialism」の訳を何にするのかということに、「ナチスが何をしたか」ということを考慮する必要があるのかという疑問がある。


たとえば、これは「朝鮮民主主義人民共和国」の「民主主義」の日本語訳をどうするのかというような話ではないのだろうか?我々は普通にそれを「民主主義」と呼んでいる。北朝鮮は民主主義国家だとはとても言えないから別の語を使うべきなんて話はもしかしたらあるかも知れないけれど聞いた事は無い(「北朝鮮」と呼ぶのがそれに当たるのかもしれないが)。


それと同じだとするならば、「national socialism」の訳語を考える際に考慮すべきは、この言葉がどのようにして出来上がったのかということであって、ナチスがどうだったかではないのではないか?


というわけで、ウィキペディアの「国家社会主義」の項を見てみる。
国家社会主義 - Wikipedia


そこには、

イギリスの社会主義者であるヘンリー・ハインドマンは、マルクス主義に傾倒しながらも第一次世界大戦中の1916年にはNational Socialist Party(国民社会主義党とも訳される)を設立して、愛国的なナショナリズム社会主義を結合した「国家社会主義」(national socialism)を主張した。

また1918年のオーストリア国家社会主義労働党(de)、1919年のハンガリーのゲンベシュ・ジュラなども「国家社会主義」を掲げた。これらは反ユダヤ主義など、後のナチスとの類似性を持った。

とある。次に、

1920年から1945年までドイツに存在した国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)は、党名の一部および25カ条綱領で国家社会主義(national socialisn、略称:NS)を掲げ、前身のドイツ労働者党時代からの社会主義ナショナリズム反ユダヤ主義など主張した。ただし1925年のアドルフ・ヒトラーの著作「我が闘争」では社会主義の側面は少なく、1934年の長いナイフの夜ではナチス左派の主要メンバーは粛清され、指導者原理が強調されていった。

とある。


ヘンリー・ハインドマンの「national socialisn」とナチスのそれとが繋がっているのかは、これだけでは良くわからない。繋がっているのだとしたら、ヘンリー・ハインドマンの思想を考察する必要があるだろう。


繋がりが薄いのだとしても、考察すべきは「理念」としての「national socialism」であろう。「national」とあるからには「national」という語を使う理由があったのであろう。その上で、北朝鮮の考える「民主主義」とは何かというのと同じように、ナチスの考える「national」とは何かということになるのではないか?


というように考えれば、「national」の訳語は結局のところ「国家」あるいは「国民」となるのではないかと予想する。ナチスの考える「国家」「国民」にユダヤ人等が入っていないからといっても、それがナチスの考える「国家」「国民」なのであれば、そう訳すのが不適切ということにはならないのではないか?その上で、ナチスが考えていた「国家」・「国民」の定義はこれこれであると説明すればいいことなのではないか?


自信はないんだけれど、素人考えとしては、そう思ってしまう。