『信長公記』とフロイス『日本史』

フロイス『日本史』に関して。


太田牛一の『信長公記』とフロイス『日本史』は安土宗論についての重要史料だ。

ルイス・フロイスの『日本史』でも、信長公記と全く同じ流れで宗論が進んでおり、やはり「妙」のところで法華宗側が回答に詰まって決着がついている。宗論の項冒頭にフロイスが書いている通り、彼にとっては法華宗も浄土宗もどちらも「悪魔の教え」として完全否定すべきものであり、また「彼らはなんら哲学的知識を持っていなかったので」などと両者とも蔑視している。つまりフロイスが浄土宗の勝利のために信長と口裏を合わせる理由は全くないと言え、信憑性は高い。

安土宗論 - Wikipedia


両史料の安土宗論の記事は非常に似ている。


というか、似ているというよりもほぼ同じだ。


いくら同じ事件を取り上げているといったって、ここまで似るものだろうか?


同じ事件でも記者により違いが出てくるものではなかろうか?現代でも違う新聞社の記事なのに非常に良く似た記事が書かれていることがある。それは同じ事件だから似ているのではなく、大抵の場合は共同通信だとかロイターだとかの通信社の配信記事を元にして書かれているものだ


信長公記』とフロイス『日本史』の記事も同様に情報源が同じだと考えるべきだろう。


フロイスが『信長公記』の元となった太田牛一の書いた日記等を参照したとか、あるいはフロイス、牛一ともに第三者の記事を参照したとかいった可能性が考えられる。


このことについては確か『日本史』の翻訳者も指摘していたように記憶している。


だが『信長公記』の成立に関する研究本で、このことを指摘しているものを俺は見たことがない。研究本をそんなに読んでいるわけではないから指摘しているものもあるかもしれないが、『信長公記』の成立を考察するなら必ず取り上げるべきことだろうと思う。