これを入間田宣夫氏風にいうと、腐敗した貴族社会を武士が正して行く、というような武を文よりも重んずる軍国主義的描写、ということになるかな。
⇒大河ドラマ「平清盛」の「正義感」 - 我が九条−麗しの国日本
ま、俺が言いたいのは、清盛は武士けど、武士とか文官とかいうことじゃなくて、世の中を正すというようなご立派な動機ではなく、出世欲のかたまりみたいな人間が「あー出世してえ、でも上のご機嫌伺いしてても望めることは高が知れてるしなあ」みたいな閉塞感があって「それならいっそのこと上を見るんじゃなくて下を味方につけて、その力でのし上がっていけばいいやんか」みたいなことをひらめいて、で、下は下で「清盛はんの力になってあげてもいいけど、タダでというわけにはいきませんなあ、そこんとこよろしゅうたのみまっせ」みたいな感じてギブアンドテイクの関係を築いていって、で、見事に念願かなって平家は繁栄するんだけれど、下の者は「もう平家に利用価値はありませんなあ、これからは頼朝さんでっせ」と見限っていくみたいな話の方が面白いのになあって話。でも多分、清盛が正義の人だと、 ワロタンさんのコメントのように、ある時点で正義の人が悪人になるって可能性が高いんでしょうね。
あと白河院の殺生禁断について調べてて思いついたんだけど、『古事談』に加藤大夫成家という人物が登場してて、
殺生禁断命令にもかかわらず、成家が鷹狩を行っているとの話を聞いた法皇は、使いを出して成家を御所に召喚します。
このとき成家は従者として下人二人を連れ、御所の門前に鷹をつなぎとめて、一人参内しました。
法皇は激怒し、殺生禁断を命じてから何年にもなるのに何を考えて鷹狩をするのか、朝敵とみなすぞ、と高飛車に言い放ちます。
大夫の位を持つ成家ですが、法皇から見ればたかが一介の田舎武士一人、当然と言えば当然の態度です。しかし成家の返答は、法皇をして唖然とさせました。
成家は白河院の近臣・平忠盛に仕える家人で、しかも、もと法皇お気に入りで今は忠盛の妻・祗園女御のために、毎日小鳥を届けていたと言うのです。
「もし万が一さぼってしまったら重い罪に問われ、武家の習いとして重罪を犯せば、主人に首を切られてしまいます。
法皇の勅命に逆らっても、牢獄につながれるか流罪ですみます。命には代えられませんので、喜んで参内いたしました。」
成家はおそらく胸を張って答えたことでしょう。
⇒中世加賀の群像 Vol.5 武家の習いと勅命〜加賀介成家の場合
なんてエピソードがある。ドラマで鱸丸が殺生禁断令のために漁が出来なくなって困窮しているという場面があったけど、あそこで清盛が忠盛にそのことを相談して、忠盛が「よっしゃ、それならワシの命令で漁をしてることにすればええやんけ」って言って、それを聞いた法皇が「ぐぬぬ…」って唸って、清盛が「武士ってスゲー、これからは武士の時代だぜ!」って叫んで、己が何者なのかという悩みがふっとんだって話にすれば面白かったのになあとも思う。
って、どんどんネタに走ってるけど。