グランドキャニオンには柵がない

ネット○○派 part355 - 今日の雑談
経由
machineryの日々 実務のない新世代


「グランドキャニオンには柵がない」というのは小沢一郎の著書にある言葉だそうで、検索するといっぱいヒットする。これが規制緩和の文脈で使われているのだが、実際のところどうなんだろう?


日本にグランドキャニオンがあったら俺個人としては柵を作ってほしい。なぜなら怖いから。


アメリカ人が柵を作らないのはなぜかと考えるに、無駄な経費を省くためというより、「大自然の景観をできるだけ損なわない」という「強い意志」があるのではないかと思いますね。つまり「自然への不介入のための強力な介入」でしょうこれは。


日本人にはそういう強力な意思が足りないから、あったほうが安全だからという理由で気軽に柵を作れるってことではなかろうか。規制緩和とはあまり関係がないように思いますけどね。


というわけで、小沢一郎の言葉にも、逆にマシナリ氏の言うことにも、どちらにもピンとこない。まあグランドキャニオン云々はたとえ話であって、そこだけ突っ込んでもしょうがないんだけど。


では、事の本質であるところの、事前規制・事後規制の話はどうなんだってことなんだが…


訴訟云々はこの手の話でよく言われるところだけれど、実際どうなんだろう?確かに日本では訴訟のハードルが高い。ただ、訴訟の勝ち負け以前に訴訟に持ち込むことそれ自体が相手にダメージを与えることになるというイメージがある。訴えられる側に立つ組織・人間も訴えられたらたまらないということで、勝つ見込みがあろうとなかろうと、とにかく訴えられないようにしようという気持ちがあるように思う。特に組織においては、訴訟になれば、自分一人では解決できず上司に迷惑が及ぶと肩身が狭いみたいな、訴える側と訴えられる側という対立軸とは別の組織内部の事情みたいなものもあるように思われる。要するに「事なかれ主義」というやつだ。


というわけで、マシナリ氏の言い分はもっともらしいけれど、俺には納得できるものじゃない。

      • -

ところで、俺は飯田泰之氏の取り巻きにも小沢一郎ファンクラブの面々にも良い印象を持っていない。けれど敵の敵を味方として見れるかというと、それもまたできない。


jura03氏がマシナリ氏の

なんというか、しばらく前には「世間知」と「専門知」という対立で描かれる時期があったように思うのですが、それは本質的な対立ではなく、お互いに「俺の方が詳しい」と言い張る「学術知」と「実務知」が不毛に対立しているというのが実態のような気もするところです。

という文章を引用しているのは、それに同意しているからのように思えるが、当のマシナリ氏が「俺の方が詳しい」と言い張る人であるようであり、おそらくこの文章はjura03氏が抱いた感想とは別のことを主張しているように思われ。


(追記2/9)

お互いに「俺の方が詳しい」と言い張る「学術知」と「実務知」が不毛に対立している

というのは「異なる価値観を持つAとBがお互いに自分が絶対に正しくお前が間違っているとして他者を見下している不毛な対立」という意味じゃなくて、「バカとバカがどっちも間違っているくせに正しいと言い張っている不毛な対立」という意味ですよね。「学術知」「実務知」と括弧付きで書いているのもそのためであって、「両者を見下している本当のことがわかっている自分」という立ち位置から書いているわけで、「トンデモ経済学者」なんて言葉が出てくるのもそのためであり、「正しい」ことを言えばそれでいいのかという問題提起じゃなくて、明らかにお前は間違っていると言っているわけですよね。それは前者の意味での「不毛な対立」に新たにCが加わっただけのように俺には見えますね。


ただ、ケインズの言う「実務屋」というのは文脈からみて政治家のことであって、すなわち小沢一郎が該当するわけで、政治家は飯田先生を含む浮世離れした(せざるえを得ない)専門家の影響を受けている、つまり「実務屋」は専門家の奴隷なんだという話をケインズはしているように思うわけで、それを踏まえるとマシナリ氏が何を言っていっているのか(現場で働く役人を実務屋としているように思われる)正直理解に苦しむところはある。


さらに言えば山形浩生氏の訳に「トンデモ経済学者」とか「キチガイ」とか「駄文書き殴り学者」とかあるのはケインズがそんなこと言っているとは思えないわけで、ケインズは「それが正しい場合にもまちがっている場合にも」と言っているわけだから、それが適切な訳なのか疑問に思う。


ケインズが言いたいのは、専門知と実務知が対立しているようにみえることも実は「現在の専門知」と「専門家の間では既に破棄された専門知」の対立であって、いずれにせよ専門知なんですよ、だから専門知が現実と乖離しているととしても専門知を軽視していいわけじゃないんですよ、ことではないんですかね?