日本国憲法前文に関する基礎的資料 - 衆議院

日本国憲法の前文を巡り、安倍総裁の国語能力に関して疑義が発生: ニュースの社会科学的な裏側
このuncorrelatedという人はリフレ派批判のころから有名になって、はてなブックマーク人気エントリーで良くみかけるんだけれど、正直俺の心に全く響かない(リフレ派批判の記事を含む)。最近の天賦人権の話も全く同意できない。


で、今回は安倍氏憲法解釈を批判しているわけだが…


ちょっとこれと比較してみよう。
日本国憲法前文に関する基礎的資料 - 衆議院 (PDF)
(平成15年7月 衆議院憲法調査会事務局)



衆議院憲法調査会事務局

そしてこのような決意に基づいて、日本国民は自国の安全と生存を、かつての日本がそうであったように、最後的には武力と戦争によって維持しようとするのではなく、ひとえに平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼することによって維持しようと決意したとするものである。そこに九条の戦争の放棄と戦力の不保持の原則が現われるのである。
 この文句を以上のように解すべきであるとするならば、この文句から自衛のためであれば戦争を認め、また自衛のためであれば戦力の保持を認めるというがごとき考え方を導き出すことは許されない。すなわち、諸国のうちに、平和を愛せずその公正と信義に信頼しえない一国または国家群が存在し、わが国がその侵略に脅かされているとし、その侵略に対処しわが国を防衛するために、平和を愛する一国または国家群の信義と公正に信頼し、その一国または国家群と軍事同盟的な関係に立つこともできる、というような解釈はとうてい認められない。


安倍氏

あの、日本国憲法の前文にはですね、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意したっと書いてあるんですね。つまり、自分たちの安全を世界に任せますよと、ゆっている。


uncorrelated氏

隣国を侵略して安全と生存を保持することを目指さないと解釈するのが一般的であろう。


(俺の解釈)
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼する」とは「外国が日本を侵略しないと信じる」ということである(したがって現実には脅威が存在してもそう信じ続けなければならない)。日本の平和は諸国が日本の信頼に応えて侵略行為をしない限りにおいて守られる。安倍氏の「自分たちの安全を世界に任せますよ」という解釈は(積極的に支持するわけではないが)間違っていない。uncorrelated氏の解釈は「日本国民は、恒久の平和を念願し」の部分はそうである。また前文は自衛のためと称しての「侵略」がしばしば行われることを念頭に置いたものであるから、その意味では「そのことも言っている」と言えるかもしれないが、安倍氏の解釈への批判になっていない。全く理解に苦しむ。

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衆議院憲法調査会事務局

 ここに「名誉ある地位を占めたい」とは、現在、世界各国が平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を除去する、自由で民主的な国際社会の実現に努力しつつあるとし、その国際社会において名誉ある地位を占めたいとの意思を示している。


安倍氏

して、えぇ、専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。自分たちが専制と隷従、圧迫と偏狭を無くそうと考えているんじゃないのですよ。国際社会がそう思っているから、それを褒めてもらおうと、


uncorrelated氏

専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から永遠に除去しようと務めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」は、専制と隷従、圧迫と偏狭をこの地上から永遠に除去しようと務めていない国際社会においても、名誉ある地位を占めろと言う事ではない。「自分たちが専制と隷従、圧迫と偏狭を無くそうと考えているんじゃない」とどうやったら読めるのであろうか?


俺の解釈
uncorrelated氏は「どうやったら読めるのであろうか?」というが、憲法前文は「名誉ある地位を占めたい」とあり、単に「名誉ある地位を占めたいという目的のため」に努力しようと言っているように読めてしまう可能性は十分ある。uncorrelated氏がそう読めないと思うのは、文面だけではなく「そうあるべきだ」と考えているからである。もちろん、それが目的ではなく「自由で民主的な」社会を建設することを目的として努力した結果として名誉ある地位を得るべしと解釈すべきではあるが、より明確に書いても良いように思う。むしろ安倍氏の主張を「どうやったらそう解釈できるのであろうか?」と思う。みんながAが良いと言っているからAをやろうという人が、みんながBと良いと言っているからBをやろうということには必ずしもならないでしょう。Aは良いことだと思っているけれどやろうとは思わない、みんながやると言えばやるみたいなことは普通にあるでしょう。


以上、俺は安倍氏の主張を積極的に支持しようとは思わないが、それにしてもおかしな批判だと思う。そしてこんな不思議な批判に同意する人の多いこと。ま、安倍氏を批判できれば何だっていいんだろうけど…