都議会ヤジについて(その6)

 全体的に、報道関係者も今回の問題を理解してなかったのではないかという、なんとも、もにょーんとする結果になっている。

塩村文夏都議会議員へのヤジ・セクハラ問題、一名名乗り出後の雑感: 極東ブログ


しかしまあ鈴木議員が一体なんのためにあのヤジを飛ばしたのか?本人の釈明があったとはいえ、今ひとつ意味不明なので、真意を探るべくいろいろな質問をしてみるのは仕方のないところではないだろうか?


鈴木議員の意図が何であれ、あれがひどいヤジだったことは揺るがない。しかしそれ以上のことを言おうとすれば、真意を探る必要が出てくるのであり、それがはっきりしないから人それぞれの推察する真意を元に批判がなされることになる。俺から見ればfinalvent氏の見解もその一つにすぎず他の解釈も可能である。


しかし、はっきりしているのは高齢出産や不妊治療を受ける女性が現に存在するということだ。


その人が晩婚だった理由は様々だろう。晩婚化せざるをえない深刻な理由があった人もいれば、そうでない人もいるだろう。塩村議員の発言の趣旨は「問題を抱える女性たちのサポートを、東京都は積極的に進めていくべき」ということであって、なぜ問題を抱えることになったのかではない。したがって晩婚の理由が外部的な理由ではなく当人にあったとしてもサポートすべきだということだ。


それに対しては、本人に責任があるのだから公的な支援など必要ないという考え方も有り得るだろう。問題を抱えるのが嫌ならば早く結婚すればよかったのだ。その意見に同意できるか否かはともかくそういう考え方はアリではないだろうか?それは差別的発言ではなく単にイデオロギーの違いであるとも考えられる。


ただし、それを「早く結婚すればいいじゃないか」と発言すれば、止むを得ない事情で晩婚になった人もそれに含まれることになってしまうので不適切な発言ということになろう。おそらくは鈴木議員が「反省」しているというのはそういうことなんだろう。また、公的支援が必要かと云う文脈ではなく、個人が決定すべきことを強制するかのような発言として受け止められることにもなろう。


しかし、先に「考え方も有り得る」と書いたが、その考え方を適用すれば、たとえばスピード違反で事故って障害を負った人などに対しても自業自得だから何らの公的な支援は必要ないということになろう。鈴木議員の日頃の信念がそういうものであるならば一貫しているが、ことさらに晩婚化だけを取り上げるのだとしたらそこに女性差別感情があるということになろう。


さらに言えば、先の参院選自民党のマニュフェストには

特定不妊治療に要する費用の助成、相談支援等の支援の充実、周産期医療ネットワークの整備・充実など、出産環境の整備を図ります。

参院選2013のマニフェストを「妊娠・出産」の視点から比較してみた | みんファミプラス
とある。したがって塩村議員の発言は自民党の政策と同じ方向にあるものだ。それを自民党議員がヤジるというのは自民党をヤジっているのと同じである。もちろん同じ方向にあるといっても取り組み方に温度差があるのかもしれない。しかし塩村議員の発言には自民党批判など一切ないのだから、それをヤジるのはどう考えたっておかしいのである。


つまり塩村議員は本来ヤジられるはずの無いところからヤジられたのである。最初から意見が対立しているところからのヤジならばそれほどショックは受けないだろう。考え方を共有しているはずのところから、ありえないはずのヤジを受けたのである。表面的には女性問題に取り組んでいるポーズをしていながら、実態はそうではないという、塩村議員に対する、また女性に対する、さらに有権者に対する裏切りなのである。